11月7日(土)、2015年度秋季特別展「戦後を語る70のカタチ」関連映画上映会を開催しました!!

11月7日(土)、2015年度秋季特別展「戦後を語る70のカタチ」関連映画上映会を開催しました!!

 2015年11月7日(土)、特別展関連企画として映画『家族』の上映を行いました。上映に先立ち、副館長田中聡よりご挨拶を申し上げるとともに、今回の上映に協力をいただいた京都映画センターの一柳晋氏より、フィルム上映についての説明をいただきました。
 現在、私たちが見る“昔の映画”の映像の多くはデジタルリマスタ―ですが、本上映会では、1970年当時に映画館で実際に上映に使われた35ミリフィルムを用い、当時の人々と同じ映像を見ていただきました。そのため、当時と同様に、映写室では約2時間の上映中に8本のフィルム交換が行われます。当時のフィルムは現在よりも粒子も荒く、多少ぼやけて感じた方もあるかもしれません。
 映画『家族』は、長崎県伊王島から開墾のため北海道に向けて移住する家族の物語です。炭鉱での生活の行き詰まり、工場に勤めてマイカーを手に入れた兄弟宅の表向きの華やかな暮らしぶりと実情、入場せずに外から眺める喧噪の中の万博、大阪と東京を結ぶ新幹線など、オールロケで撮影された高度経済成長最中の日本の裏と表を走り抜けるドキュメンタリータッチのロードムービーです。参観者からは、「山田作品は日本人として忘れがちになりやすいことを思い出させる」といった感想が寄せられました。
 また、上映に続き、「映画『家族』から見た高度経済成長」(『戦後史再考―「歴史の裂け目」をとらえる』)の著作もある本学生存学研究センター客員研究員番匠健一氏より「山田洋次映画における北海道と長崎」と題した作品解説が行われました。番匠氏は、山田作品の物語性やそこに映し出される歴史に言及し、高度経済成長の陰でそれを眺めるだけであった人々の存在や、当時すでに開墾の矛盾が露呈していたにも関わらず主人公たちが北海道の開墾に希望を見出すラストシーンの是非をめぐる議論、そして山田作品全体を通して提起される、植民地支配と敗戦によってもたらされた引き揚げ者の故郷喪失感などについて論じられ、戦後日本社会と山田作品への理解が深まるお話となりました。質疑応答では、「なぜ、北海道だったのか」との質問に対して、「すでに戦後開拓者が離農した家に入るラストの設定には、矛盾による破たんがあってもその上に希望を託して生きざるを得ない人々の姿を捉えているのではないか」との答えをいただき、改めてこの作品の意味を考える機会となりました。

 

フィルムの巻き戻し(映写室にて)   解説する番匠氏
▲フィルムの巻き戻し(映写室にて)   ▲解説する番匠氏

 


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