館長あいさつ | ご挨拶・概略 | 立命館大学 国際平和ミュージアム

館長あいさつ

 

 

 

 

 

 

 

 

立命館大学国際平和ミュージアム館長

吾郷 眞一(立命館大学衣笠総合研究機構教授)

 

 

 

 立命館大学国際平和ミュージアムは「平和と民主主義」を教学理念に持つ大学内に設置されるにふさわしい博物館です。それはまた、大学の教育と研究に資するために大学が作ったというだけでなく、市民社会と一体となって作りあげられたという経緯を持つことから、社会に開かれた公共物です。しかも、社会は地域や国内社会にとどまらず、世界の同種の博物館と連携する中で国際的広がりを持っています。平和博物館としては、大学発のものであるという珍しさを持ち、また、平和を単に武力戦闘がない状況とだけとらえるのではなく、構造的暴力を含め平和創造を目指していくというメッセージ性をもつ本ミュージアムは、国際社会においても異彩を放っています。

 

 アンネのバラ、愛吉・すずのバラに迎えられ建物に入り、すぐの階段を横手にわだつみ像を眺めながら下ると常設展示が始まります。「十五年戦争」と「現代の戦争」をテーマとする展示物を経て、2階に上がると、「平和創造展示室」があります。ここでは、戦闘状態がないことだけが平和ではないことが示され、続いて「無言館」/京都館-いのちの画室、「平和ギャラリー」と続きます。実物資料650点、写真資料550点を見て1階に降りると、中野記念ホールの前の広い空間で、手塚治虫「火の鳥レリーフ」と「ムッちゃん平和像」に圧倒されつつ、しばし平和が、「どこかからやってくるもの」でも「与えられるもの」でもなく、「私たち自身の努力で創るもの」ということをじっくり考えることができます。なお、中野記念ホールでは、写真展、映画上映、講演会など特別企画が催されます。ホールの反対側には国際平和メディア資料室があり、平和関連の図書・雑誌資料・AV資料約47,000点(内、児童図書約1,000点)を所蔵し、利用者に提供しています。
 

 第一次大戦の終結のために開かれたベルサイユ平和会議から数えて、来年がちょうど100年になりますが、その平和会議で国際連盟と同時に設立されたILO(国際労働機関)の憲章前文は、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができるから」という文章で書き出しがなされています。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」というのはユネスコ憲章の前文です。平和は武力衝突がないだけでありません。人権についてのセミナーなどをミュージアム主催で開催することがあるのも、そのような発想が根底にあります。

 

 当館が平和博物館と呼ばず平和ミュージアムとカタカナを使うようにしていることは、Museumの語源となるMusesが、ギリシャ神話の芸術・学問をつかさどる姉妹神であることによっています。総合大学である利点を生かし、学術的知見の上に構築された展示物を通して、平和を視覚に訴え、かつその衝撃を心の中に残すとともに、平和への志向は個人の主体的な行動によって現実化するということを体感できる本ミュージアムにぜひ足を運んで下さい。お待ちしています。(2018年6月)


【プロフィール】
1948年4月10日生まれ(国際法の父と言われるH・グロチウス生誕365年後同日、世界人権宣言採択の年)東京大学法学部、法学政治学研究科、ジュネーブ大学大学院(同博士)卒業後、埼玉大学、ILO(国際労働機関)、九州大学に勤務。2013年より立命館大学特別招聘教授。専門は国際法、特に国際経済法、国際組織法、国際労働法。主著として『国際労働基準法』(三省堂1997年)、『国際経済社会法』(三省堂2005年)、『労働CSR入門』(講談社現代新書2007年)など。政治的統合は経済社会協力によって達成できるとする「機能主義」的な発想をもつ。国際法学徒になったのは、高校時代に広島平和記念資料館を訪ねて衝撃を受けたことによるところが大きい。現在、ILO条約勧告適用専門家委員会委員、およびアジア開発銀行行政裁判所判事を兼任。

 


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