館長あいさつ

立命館大学国際平和ミュージアム館長 高杉 巴彦

 館長の高杉巴彦です。人類は二つの世界大戦を経て、歴史と民族を尊重することの大切さを学びました。今では地球のあらゆる国や地域の経済・政治が連関し、物資や資金、人材までも流動し、互いに交流し、影響し合う時代となっています。にもかかわらず、一方では民族主義や国家主義が対立し合い、多様な宗教・風俗・習慣や文化が、互いの正義を主張しあう排外主義的な状況も生み出されています。戦争には至らなくても、飢餓・貧困・人権抑圧や環境破壊が引き起こされ、医療や教育の偏差があり、地域紛争は今なお絶えることなく、世界平和は実現されていません。

  また「核兵器のない世界」をめざす機運も起きていますが、いまだ一部の軍縮や戦略的取り組みの範囲にとどまり、世界共通の合意に至っていないばかりか、今回の「東日本大震災」に伴う福島原子力発電所の深刻な事態は、「原子力の平和利用」の課題も正面に据えられていないことを露呈しました。
私たちには、こうした人類的諸課題を解決し、国家や民族が相互に発展と繁栄をもたらす「持続可能な地球社会」の創造と、人間の可能性の豊かな発展をめざす行動が求められています。特に「2011.3.11」という忘れてはならない状況下で、私たちには核の脅威のない地球環境づくりと、地球市民としての生き方・あり方が突き付けられ、ミュージアムとして果たすべき役割も重大となっています。

  2008年10月には、国際平和博物館会議が、京都と広島を舞台に開催され、世界二十数カ国からの平和博物館関係者や専門家が300名登録参加し、学生・市民を含め延べ参加者は5日間で5000名近くに及びました。立命館大学国際平和ミュージアムは主催者の一員として、この会議の歴史的成功と議論の進展に中心的役割を果たすことができました。
国際平和博物館会議での報告・議論を通じて浮き彫りになった平和博物館の役割は、第一に、戦争の悲惨さを伝え、戦争や暴力、非人道的行為に対して、人間の尊厳を大切にする意識を涵養すること。第二に、歴史認識を深めることで、「平和が損なわれた」ことの原因や本質に迫る力を人々がつけること。第三に、今特に求められる課題は、人類的課題を解決し、「持続可能な平和な社会」を創り出していく「和解と共生」の道筋を研究・創造し、行動する人材育成に尽くす事です。

  同時に、その前提としては、自分の国や地域で当たり前と考えていた価値観や歴史認識とは異なり、平和を希求する思いは共通でも、その具現化のための考え方や方法が違う人々が、その相違を認め合い、自らの価値観や認識の再構築を行う姿勢を持って、学び・行動することが求められます。私が以前副学長を務めていました立命館アジア太平洋大学では、世界の80を超える国・地域からの留学生(国際学生)約2900人と日本人学生約3200人が共に授業やサークル活動・ボランティア活動・寮生活などを展開し、自分の考えや行動を再構築していく、世界で最前線の学び方をしています。

立命館大学国際平和ミュージアムは、1992年に開設し、2005年にリニューアルいたしました。2012年には設立20周年を迎えます。ミュージアムの展示や企画・事業を通じて、今日浮き彫りになってきた「平和創造」のための博物館としてのあり方を追及し、研究・教育、学習・啓発、探求・発見の場になることを願って、私たちは館を運営していきますし、皆様のご協力を期待しています。 

2011年4月


高杉 巴彦のプロフィール

中国  黒龍江省 巴彦県生まれ。成育地  東京都新宿区。
立命館大学文学部史学科日本史学専攻卒業。立命館大学院文学研究科日本史学専攻修士課程修了。
立命館中学・高等学校教諭(京都)を経て、1996年より立命館慶祥高等学校を開校、校長となる(北海道)。
2000年より慶祥中学校を開校 立命館慶祥中学校・高等学校校長となる。
2004年より学校法人立命館 総務担当常務理事就任。 
2007年 立命館アジア太平洋大学副学長に就任。
この間、京都高等学校社会科研究会会長。北海道高等学校文化連盟副会長。
立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所 副所長。 京都府立堂本印象美術館副館長など。
専門分野:日本近代史
著作 :『城陽市史』(共著)、『アジアに強くなる75章』(監修)、「公立優位下の風土における大学附属私学の経営」(『私学経営』私学経営研究会)、「初等中等教育と高等教育―その有機的連携」(『大学行政論』共著2006年)など。
講演テーマ:「そのとき歴史が動いたのか?」「人はいつ大人になるのか」「若者が伸びるとき」「子育てと子離れ」「後手の先手を打つ教育」「私学経営と職員教育」「初等・中等教育と高等教育―その有機的連携」「札幌・京都・東京―歴史と文化で綴る三都物語」「平和とは何かー平和な社会を築くために、今私達にできること」等々


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