第23回日本平和博物館会議開催報告

第23回日本平和博物館会議開催報告

第23回日本平和博物館会議開催報告

 

 日本の平和博物館10館で構成される日本平和博物館会議は毎年、協議や情報交換のため、各館の館長や職員が集い定例会議を開催しています。本年は当館が開催館となり、2016年11月10日から11日の2日間にわたり、第23回日本平和博物館会議を開催しました。

 初日は、記念講演会、会議、館内視察、意見交換会が行われました。
「世界の平和博物館の実情と課題」(講師:安斎育郎)と題した記念講演会では、日本や世界の平和博物館の事情に精通し、そのネットワークづくりに力を入れてきた当館名誉館長安斎育郎の視点から、現在、平和博物館が抱える課題とそうした中での新しいアプローチとしてのデジタルアーカイブ事業の実践紹介が行われました。参加者からは、市民参加型のデジタルアーカイブ作成事業をプラットフォーム化することができれば平和博物館全体の可能性が拡がるとの声も寄せられました。続く会議では、立命館大学総長吉田美喜夫からの挨拶(代読)に続いて議事が行われ、本年は、平和博物館のコンソーシアム化充実のために加盟館の情報紹介コーナー設けることの検討や、近年何かと話題となる「ダークツーリズム」についての議論を中心に議事が進められました。

戦争や災害など人類の負の遺産を刻んだ場所を訪れて死者を悼み、悲しみの記憶を共有する「ダークツーリズム」は、被爆地の訪問や戦跡めぐりの旅など、以前から広く実践されていましたが、1990年代にイギリスで「ダークツーリズム」の用語でこれが定義されて分析・研究が進むとともに観光振興にも活用されるようになりました。日本では東日本大震災以降、特に注目が高まり、「ダークツーリズム」の名のもとで平和博物館を訪れる、個人の実践、旅行ツアー販売、研究が増えており、今回こうした内容での議論が行われることになりました。きっかけは何であれ、博物館を訪れて歴史の実相に対する理解を深め、平和学習の機会につながる来館者が増えることは平和博物館とって重要なことですが、その一方で、例えば体験者の証言を聞く機会や現在まで様々な営みがある記憶の場が「ダーク」という言葉で一括りに扱われることへの違和感や、それによって傷付く体験者の心情、悲惨さを商品化してしまうことなどの懸念の声も平和博物館にはあることが論じられました。平和博物館は、ダークツーリズムの場としてこれを訪れる人々を迎え入れることには問題はありませんが、「ダークツーリズム」という括りとの関わり方は慎重を要する側面があることが浮き彫りになりました。

会議の後は、平和博物館の中でも「大学立」の博物館という特徴を持つ当館の活動を支える学生スタッフによる活動の紹介もあり各館の参加者は関心を示していました。

 2日目は研修会が開催され、午前は北海道大学総合博物館の湯浅万紀子先生を講師に迎え「博物館体験の長期記憶を探る―来館者調査の意義と課題―」と題した報告をいただきました。科学館を舞台に博物館への来館体験が人々の長期的記憶の中にどのように位置付けられているのか調査研究を進めている先生の研究成果と、学術的成果を館の事業に落とす際の実践的な課題など、理論、実践の両面から平和博物館に役立つ講演を聞くことができました。

午後は、「京都・大学ミュージアム連携」メンバー館である龍谷ミュージアムをおとずれ、同館の岩井俊平先生に龍谷ミュージアムの成り立ちや課題、開催中の展覧会の見どころなどについて解説頂いたのちに、展示を見学して研修を終えました。

 

記念講演会「世界の平和博物館の実情と課題」   議事進行の様子   加盟館の情報紹介コーナーや「ダークツーリズム」についての議論等を行いました

▲記念講演会「世界の平和博物館の実情と課題」

 

▲議事進行の様子

 

▲加盟館の情報紹介コーナーや「ダークツーリズム」についての議論等を行いました

 

当館常設展示視察の様子(学生スタッフのナビを聞く参加者)   当館特別展示視察の様子(資料を見る参加者)   講義している湯浅万紀子先生

▲当館常設展示視察の様子(学生スタッフのナビを聞く参加者)

 

▲当館特別展示視察の様子(資料を見る参加者)

 

▲講義している湯浅万紀子先生

 

研修会の様子   質疑応答を行いました   龍谷ミュージアムでのフィールドワークの様子

▲研修会の様子

 

▲質疑応答を行いました

 

▲龍谷ミュージアムでのフィールドワークの様子


 


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