12月9日(土)・10日(日)、第16回平和のための博物館市民ネットワーク全国交流会 特別講演会「ダークツーリズムとミュージアムー戦争と平和を考えるー」を開催しました

12月9日(土)・10日(日)、第16回平和のための博物館市民ネットワーク全国交流会 特別講演会「ダークツーリズムとミュージアムー戦争と平和を考えるー」を開催しました

 

ダークツーリズムとミュージアム
▲「ダークツーリズムとミュージアム」講演会
 

 

 2017年12月9日(土)から10日(日)に、第16回平和のための博物館市民ネットワーク全国交流会が開催されました。毎年一回、全国から平和博物館の活動に関わる会員が集い、講演会や参加館の活動や課題を報告し、議論、交流を行うこの活動も本年で19年目となります。戦後70年以上が経ち、戦争の記憶の風化や世界や日本の取り巻く状況に対する不安の声が高まる中での開催ですが、丁寧に伝えることでの手応えや、東京・板橋で新しい博物館を作る動きについての報告もあり、平和のための博物館の広がりを感じさせるものとなりました。

 

 今回は、特別講演会として、平和教育研究センター主催の「ダークツーリズムとミュージアムー戦争と平和を考えるー」を開催しました。
近年、戦争遺跡を始め、人類の悲しみの記憶をめぐる「ダークツーリズム」とその研究に対する注目が増しています。ダークツーリズムの対象地にある平和博物館は、どのようにダークツーリズムに接続すべきか平和博物館の側でも議論が盛んになっています。2016年、2017年と日本平和博物館会議の場でも2年連続でダークツーリズムに関する協議が行われました。
 講師である追手門学院大学准教授の井出明氏は、日本におけるダークツーリズム研究を牽引してきた研究者です。講演ではまず、ダークツーリズムとは近代が抱える問題に影から接近する方法論であり、自然災害など同時代の悲しみ(東日本大震災など)を通して悲しみを共有し、それを入り口に遠い死にも近づく手法を持つものであることが紹介されました。この観点から平和博物館を見返すと、例えば戦争犯罪を個別の問題ではなく、近代の課題として俯瞰すること、死生観の問題を問うこと、が十分ではなく、語り部の役割も特殊な記憶を継承することを目的とし、当事者性に重きが置かれるためにそれを取り巻く環境が変わっても同じアプローチが取られ、伝わりづらくなっている側面があることが指摘されました。また、展示ガイドが当事者として語りかけるのではなく、俯瞰して距離をとることの大切さや、SNS時代の情報発信活動の必須条件、観光を入り口と考える視点の効用など具体的な示唆もありました。その後、学芸員の兼清によるコメント、フロアからの質疑応答があり、平和博物館が、展示交流などで他の分野の博物館とつながることで開かれる可能性、ダークツーリズムは、近代において隠されていた部分から接近する方法であり、平和はその目的ではなく、出口の一つであるとの論点が追加されました。
ダークツーリズムの場は負の出来事のあった場ですが、そこで当事者が語り続けてきたことも、こうした場の持つ記憶です。今後こうした点もダークツーリズムの観光者に問いかけることもまた、平和博物館の課題になることでしょう。

 

追手門学院大学教授 井出明氏 質疑応答の様子
 ▲追手門学院大学准教授 井出明氏

 ▲質疑応答の様子

 

 

 

 


 

 

 

 


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