科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」第6回ワークショップ/第8回メディア資料研究会を開催しました!!

3月17日(土)、第6回ワークショップ/第8回メディア資料研究会を開催しました!!


  2018年3月17日(土)、科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」プロジェクトの第6回ワークショップとメディア資料研究会第8回研究会の合同研究会「戦争体験のない世代による戦争体験継承〜京都における空襲に関わる二つの事例報告」が開催されました。
1945年、本土空襲が本格化し京都も空襲被害を受けました。戦中や戦後占領下の報道規制もあり被害の実態が知られないまま、京都は空襲がなかったとの言説も広がりましたが、京都で空襲があった場所では多くの人々が被害やその記憶とともにありました。
冒頭、国際平和ミュージアムの兼清より戦争体験継承の議論からみた今回の事例の特長について説明が行われました。戦争体験継承は大まかに、戦争体験世代が体験を咀嚼し、それを生かすことに主眼が置かれた1960年代前半まで、戦争を知らない世代に空襲や戦争体験を継承することに主眼が置かれた1980年代まで、体験継承の担い手の世代交代の中で様々な課題が浮かびあがる今日までの3つの時期区分で整理されています。京都でも空襲体験の継承が全国的に盛んになった時期に空襲に関する調査や聞き取りが行われ、その後、語り継ぐ努力や碑などが作られてきましたが、今はその担い手も高齢化しています。今回の二つの事例は体験のない世代間での継承、映像による記憶の側面からのアプローチと日本史の研究教育の中での写真資料からアプローチと従来の聞き書きといった手法とは異なる方法でもあります。
発表では、最初に黒田一馬氏の「あの日々を織る」(約24分。西陣空襲を知る2人の証言を中心とした映像作品)の上映と作品の狙いの説明が行われ、黒田氏は、これまで文章による記録が中心だった西陣空襲について映像で記録を残すこと、史実では追い切れない体験者の経験や感情を映像で捉えることを意図した作品であることを説明しました。この点に対して、参加者から、作品の中で語り部であることを強く意識して語る体験者と、記憶の道案内をするように淡々と当時の情景などを語る体験者の違いが描き出され、体験者それぞれが記憶を持ち、またそれも語る時期や対象によって揺らぐという記憶の曖昧さがうまく浮かびあがった作品であるとの指摘がありました。
続いて坂本満宏氏と坂本ゼミ生若林美玖氏による発表「馬町空襲の歴史を学び語り継ぐ取り組み」では、坂本氏が「馬町空襲を語り継ぐ会」の発足と活動、その中で新たに発見された馬町空襲の数日後を写した写真の発見を契機に、2017年度の京都女子大学の日本史ゼミの中で、これら資料をもとに、1、馬町空襲に関する文献調査、資料としての写真分析、フィールドワーク、聞き取り調査を行い、これまで曖昧であった事実を確定し、2、その成果をまとめた「伝えたい記憶-写真に見る京都・馬町空襲被害地図」を制作し、3、これをもとにパネル展や「馬町空襲を語り継ぐ会」への成果発表などを行った様子を説明されました。その後、若林氏が聞き取り調査により文献ではわからない体験者の気持ちを知ることができたことや、写真資料の詳細な解析に伴う様々な課題、調査で明らかにされたことを正確に伝える難しさと責任を強く意識するようになったことなど、今回の継承に携わった体験を語りました。質疑応答の中で坂口氏は、学生たちとの基礎的な研究を通して新たな資料が作成されたことで、今回新たな語りが生み出され、それが継承につながることを語られました。
また、発表と質疑応答の間では、当館収蔵の紙芝居「実録馬町空襲」や、写真:修道学区馬町附近被爆跡(「伝えたい記憶-写真に見る京都・馬町空襲被害地図」掲載資料)などの閲覧も行われました。

第6回ワークショップ/第8回メディア資料研究会
日時:2018年3月17日(土)17:00~19:00
会場:立命館大学国際平和ミュージアム 2階ミュージアム会議室
参加者:20名
報告者:坂口満宏(京都女子大学文学部教授)
若林美玖(京都女子大学坂口ゼミ3回生)
黒田一馬(立命館大学映像学部4回生)
報告題目:「戦争体験のない世代が伝える戦争の記憶~京都の空襲に関わる二つの事例報告~」


 

▲坂口満宏 氏

 

▲若林美玖 氏

 
▲黒田一馬 氏 ▲資料を閲覧する参加者


 

 

 


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