6月2日(土)、佐藤真紀氏講演会「人道支援で出会ったヤズディの人たち」を開催しました!!

6月2日(土)、佐藤真紀氏講演会「人道支援で出会ったヤズディの人たち」を開催しました!!

 

 

 6月2日(土) 、春季特別展の関連企画第2弾として、講演会『人道支援で出会ったヤズディの人たち』を開催しました。講師にはNGO法人JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)の事務局長、佐藤真紀氏をお招きしました。最初に国際関係学部鳥山純子准教授より紹介がありましたが、JIM-NETはイラクを中心にがん、白血病患者への医療支援を行っている日本のNGOや、市民グループ、関心のある医師たちのネットワークです。


 2014年のIS(イスラム国/イスラム過激派組織)によるヤズディへの襲撃後、イラク中央政府のヤズディの女性国会議員ビアン・ダヒル氏の訴えもあって、一時撤退していたクルド人部隊とアメリカ軍とが協力してISの拠点への空爆を再開し、シンガル山に逃れた人々はようやく解放されました。JIM-NETは2015年にイスラム国から解放された避難民の医療支援をいち早く実施しています。中には性的な暴力を受けた女性も含まれていました。今回はイラク北部アルビルでの支援活動で関わったヤズディの人々の様子を中心に講話していただきました。


 ヤズディをはじめ難民キャンプでのがん患者の闘病生活は、困難な状況下にあります。その中でも支援のためのチョコレート缶のデザインをする女の子たち、小児がんで片腕を失ったサッカー好きのヤズディの少年のために、イラク代表選手と交流の機会を設けたことや、ヤズディが新年を祝う日に卵に色を塗るお祭りに卵を提供したこと、カキ氷製氷機を使ってナツメヤシのシロップをかけたカキ氷を、おいしいそうに食べる子供たちの姿などが紹介されました。キャベツなどの葉物を食べないらしいこと、日本食にも興味があること、(同じ中東地域に多く暮らすムスリムにとっては禁忌である)豚肉もおいしく食べることなど、身近な話題を織り交ぜた写真と映像を通じて、私たちと同じ時代を生きるヤズディの暮らしを垣間見ることができました。


 近年のイラク北部での難民支援活動は、イラク国内で抱えている問題が影響しているそうです。クルド人自治区内で戦闘の激化にともない、イラク中央政府がISに対抗するための軍事費が拡大したことで、医療活動など生活のために投じていた予算が圧迫されているのです。元来、イラクは生活水準の高い国で人的な基盤整備は整っており、施設さえあれば骨髄移植などの治療も可能ですが、経済制裁の影響もありインドなど近隣国の病院で施術しています。従来イラク政府がその費用を補助していましたが、軍事費が拡大されたことで、薬に費用のかかるがん患者支援にとっては、大きな痛手となっています。


 一方で、佐藤氏ご自身が活動の中で直面し、簡単には答えのみつけられない疑問も、提示されました。ユーチューブで公開された患者の画像に対して、彼らを侮蔑するような外部からの書き込みがあったそうです。また、クルドの兵士が、ISの兵士を殺害する姿を自ら映像におさめて、子供たちに見せ共有している場面にも遭遇したそうです。こうした現実を私たちはどんな風に捉えたらよいでしょうか。


 残念ながら亡くなってしまうがん患者も多く、支援活動の難しさと同時に、大きな支援と支援の間をつなぐ橋渡しとしてのNGOの果たす役割について、佐藤氏は実感をこめて語って下さいました。


 32名の参加者の中には学生の姿もみえ、これから国際社会で活躍していく世代の人にも刺激となったのではないでしょうか。ヤズディの人々を身近に感じることで林典子氏の写真展についてより深く知り、広い視野で国際平和へ関心をもつことができるような講演内容でした。

 


講演する佐藤真紀氏(JIM-NET事務局長)   カキ氷を味わう避難民の子供達など、活動の様子が紹介されました
▲講演する佐藤真紀氏(JIM-NET事務局長)   ▲カキ氷を食べる避難民の子供達など、活動の様子が紹介されました
     
質疑応答を行いました  
▲質疑応答を行いました    

 

 

 

 


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