2018年ノーベル平和賞者の活動と勇気に敬意を表して

2018年ノーベル平和賞者の活動と勇気に敬意を表して

 2018年ノーベル平和賞者の活動と勇気に敬意を表します。

デニ・ムクウェゲ氏Denis Mukwege
ナディア・ムラド氏Nadia Murad

 今年の平和賞は、戦争や武力紛争下における性暴力の根絶に尽力している2人が受賞しました。

 紛争地では、女性や子供に対する性暴力が戦略的に「兵器」として使われています。
 イラク北部を拠点とする少数民族のヤズディのナディアさんは、2014年、IS(イスラム過激派組織)によって捕らえられ、家族を失い、性暴力の被害にあいました。
 国際平和ミュージアムでは2018年春季特別展 林典子写真展「ヤズディの祈り」を開催しました。写真家の林典子さんが、ナディアさんをはじめとしてISの襲撃によって、性暴力の被害にあった女性たちや、故郷を追われたヤズディの人々を丹念にとりあげた写真展でした。ナディアさんは、林さんが訪れた時はまだ顔を隠したままで取材に応じていました。それは捕らえられたままの家族を心配してのことでした。その後、国連などを通じて自らの性暴力被害の実態と、他の多くのヤズディの女性たちの声を届け、国際社会へ向けて正義を訴え続けた活動が、今回の受賞につながりました。
 展覧会へ来館してくださった皆さんも、ヤズディや紛争下での性暴力の存在を知り、改めて関心をよせたのではないでしょうか。
 また、もう1人の受賞者、コンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲさんは、婦人科医として内戦状態の続く地域でレイプ被害を受けた女性の心と体の治療に、生涯をささげています。
 今年は、2008年に、戦争や紛争時に「兵器」として使用される性暴力は、戦争犯罪であり国際平和と安全への脅威であるとして国連安保理で決議されてから、10年の節目にあたります。
 立命館大学国際平和ミュージアムは、これからも博物館における活動を通して、さまざまな問題に目を向けていきます。

 メディア資料室では写真集『ヤズディの祈り』(2016年 赤赤舎)を閲覧できます!
ヤズディの証言とともにご覧ください。

 

林典子さんより以下のコメントを頂きました

 今年4月~7月までの『ヤズディの祈り』展開催期間中は多くの方々に会場にお越しいただき、本当にありがとうございました。この度、ヤズディ教徒のナディア・ムラドさんがノーベル平和賞を受賞しました。しかし、受賞が彼女にとってのゴールではなく、ナディアが受賞後のスピーチの中で「一つの賞や一人の人間では、目的を達成することができない」と発言しているように、今後私たち一人一人、そして社会が、どのように性暴力の被害者、各地で虐げられている少数派の人々に向き合っていくのか。その結果が少しづつ見えてくることで、ようやく彼女のこれまでの活動、そして今回の受賞に意味があったと言えるのだと思っています。

 

 

 



▲写真集『ヤズディの祈り』(2016年 赤赤舎)

 

 

 

 
▲2018年度春季特別展
 
▲ナディア・ムラド氏インタビュ-


 

 

 


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