11月17日(土)、科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」プロジェクトの第10回ワークショップ「戦争体験『語り』の継承―広島、長崎、沖縄、国立を事例として―」を開催しました

11月17日(土)、科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」プロジェクトの第10回ワークショップ「戦争体験『語り』の継承―広島、長崎、沖縄、国立を事例として―」を開催しました

会場の様子

 

 11月17日(土)、第10回ワークショップ「戦争体験『語り』の継承―広島、長崎、沖縄、国立を事例として―」を開催しました。本研究プロジェクトの成果展示である秋季特別展「8月6日」の関連企画として一般の方にも聴講いただき、延べ26人の参加がありました。
 外池智氏(秋田大学)は、継承的アーカイブを活用した「次世代の平和教育」のカリキュラム教材や授業実践の調査・分析をされており、今回は教育学の立場から戦争体験の語りの継承についてお話いただきました。
 はじめに、お父様の人生を通して戦争体験に向き合うようになったという自身のきっかけを語られ、戦争体験者がいなくなる中で戦争体験を残すための取り組みとして、モノによる継承とヒトによる継承があることを説明されました。今回の発表では、その中でもヒトが語りそのものを継承する「伝承者」について、広島、長崎、国立の各プロジェクトの設立経緯と養成課程の特徴、内容構成論にもとづく分析がなされました。伝承者による語りの内容は、①事実的語り(歴史的事実の説明)、②現象的語り(熱線や爆風などによる被爆の実相)、③感情的語り(体験者がその時に感じたことなど)の三要素によって構成されます。外池氏はこれらの分量、聴衆の受け止め、視聴覚資料の活用など伝達方法に注目して分析されました。社会科教育においては事実的語りや現象的語りが重要ですが、これは他の方法でも学べます。ここに重点が置かれすぎると体験者や伝承者から聞くことの重みが減るというジレンマや、体験者の感情的語りをどのように受け止め表現するのかが問われるなどの課題がある中で、伝承者が試行錯誤を繰り返しながら語りを磨いている様子が紹介されました。大まかな傾向としては、伝承者の養成が行われ伝承の型が定まっている広島、伝承の支援がなされユニークな伝承方法が多い長崎、伝承者同士の相互批評などから各伝承者の語りが作られる国立、という特徴が明らかになりました。
 外池氏の発表を受けて、本プロジェクトのメンバーであり国立伝承者養成アドバイザーでもある根本雅也氏より、三事例のそれぞれの利点、継承活動における「伝承者」の意義と課題、継承とは何かという問いかけがなされました。これに対して外池氏より、各実践はそれぞれ目的ごとにポイントが整理されて語られて、ある種の地域性が反映されていること、「伝承者」は授業とは異なり聴衆に向き合いその反応を読み取りながら語りを再構成して伝えていること、個人の体験を解き明かして伝えていることが挙げられました。その一方、それゆえに体験者の証言が揺らぐと語りの正当性が失われることが課題として挙げられました。そして、継承とは体験の中に現れた各人の生き方、置かれた状況、価値観などを多面的に追いかけることで普遍的テーマに結びつくことであるとの見解が語られました。
 伝承者の実践は様々な課題の中で体験者の語りを次世代に届けようとするものであることを改めて感じさせられました。

科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」
第10回ワークショップ
「戦争体験『語り』の継承―広島、長崎、沖縄、国立を事例として―」
日時:2018年11月17日(土)15:00~17:00
場所:立命館大学国際平和ミュージアム 2階会議室
報告:外池智(秋田大学)
参加者:26名


外池智先生   討論の様子

▲外池智先生

 

▲討論の様子


 


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