今、世界の高等教育情勢は激動の時代を迎えています。グローバライゼーションが進展し、大学は従来の一国にとざされたエリート養成・研究者養成型の大学からの脱却を迫られています。21世紀の地球環境問題の解決、持続可能な社会のために、その担い手を世界の大学が協力してつくり出す時代が来ています。とりわけ、日中両国の大学間の交流はその中でも重要です。
そもそも立命館の名前は、中国の賢人である孟子の古典に由来しています。立命館は古くから中国との交流に熱心に取り組んできました。特にここ数年の動きは活発で、2005年10月には中
国政府の協力のもと、日本で最初の孔子学院を創設し、また2007年5月には立命館大学において世界で初めてとなる世界孔子学院フォーラムを開催しました。そうした実績が評価され、2007年12月には立命館孔子学院は中国政府より模範孔子学院として表彰を受けています。そのほかにも、JBIC(日本国際協力銀行)による中国内陸部人材育成事業の大学管理運営幹部特別
研修においては、これまでに約700名の中国の大学教職員が立命館で研修してきました。
立命館がこうした誠実な交流の歴史を積み重ねてきた理由は明確です。それは、日本が先の戦争で中国をはじめとするアジア各国に甚大な被害を与えたことを真摯に受け止め、平和を希求
する人材育成を行い、アジア地域との友好関係の構築に力を入れてきたためです。立命館は、これまでの歴史と経験を踏まえ、2006年7月に立命館憲章を制定し、「アジア太平洋地域に位置
する日本の学園として、歴史を誠実に見つめ、国際相互理解を通じた多文化共生の学園を確立する」ことを謳いました。
こうした本学の一連の取り組みの中で、2007年4月、中国の温家宝首相に本学を訪問いただきましたことは、立命館にとりまして大変名誉なことでした。そしてその際、立命館の硬式野球部
と100名の学生を中国に招待いただき、すでに硬式野球部は、2007年8月に訪中し、北京と天津で交流試合を行いました。2007年末の福田康夫首相と温家宝首相の会談によって2008年を日中青少年友好交流年とする合意に達していますが、100名の本学学生の招待は、その合意の一環でもあります。
いよいよ3月10日から始まる上海交通大学、北京航空航天大学、北京大学との交流は、今後、立命館が「世界に開かれたアジア太平洋地域の教育・研究拠点」となるために大きな意義を有しています。北京大学とは、「北京大学―立命館大学交流デー」
を開催し、学生フォーラム、研究フォーラム、学生団体による演技等の交流を予定しています。さらに、3月15日に中国人民大学体育館において国家行事として開催される「2008年日中青少年
友好交流年開幕式」では、100名の本学学生のほかに本学の吹奏楽部とチアリーダー部122名が参加し、演奏・演技を紹介することとなっています。学生だけで200名を超えますが、これに
研究者交流に参加する研究者や大学院生などを加えますと、この度の訪中団は300名を超える代表団となります。
また、2月、立命館の各附属校は、北京大学附属小学校・中学校と、北京航空航天大学附属小学校・中学校との間で協力協定を締結しました。これにより、2008年度から各附属校の児童間・生徒間で交流を開始します。立命館は、大学だけの交流にとどまらず、学園をあげて学習面や文化・スポーツ面での交流をはかり、世界に通用する、次世代を担う青少年の育成を目指します。
学生諸君にとっては、中国を代表する3大学の学生と直接会話を交わし、国家を担い、世界を引っ張っていく中国の学生の意気込みに直接触れることは、大きな刺激になると思います。中国の学生も立命館の学生と交流することで、正課と課外活動
を通じて成長していく日本の学生に大いに刺激を受けることでしょう。1つの大学から200名を超える学生が中国を訪問し交流するという取り組みは今回が初めてです。立命館の名は北京
市民をはじめとする国の内外で広く知られることなります。そういう意味でも皆さんが立命館の新たな歴史を築くことになるでしょう。 この度の機会が立命館と中国の交流のみならず、日本と中国の更なる友好関係を築いていく場となりますことを期待し、私の挨拶といたします。 |