モンゴルのの暮らしを支える
「白い食べもの」

#038
立命館グローバル・イノベーション研究機構 助教冨田 敬大

 モンゴルのの間では、肉は「赤い食べもの」、は「白い食べもの」と呼ばれ、人々の暮らしを支えてきました。モンゴルでは、伝統的に家族単位で家畜を飼い、自分たちの食べる肉や乳製品をまかなってきました。

 モンゴルは1924年に世界で二番目の社会主義国となりました。第二次大戦以降、ソ連の援助で近代的な加工工場が建設され、バターなどの乳製品が輸出のために工業方式で生産されるようになりました。さらに、国内でも、工業化により都市人口が増加し、肉や乳生産品などの食料が高まりました。国が機械化された農場をつくり、家庭用の家畜からも乳を納めることが義務とされる中、人々は自らの地域や家庭用に乳製品を作り続けました。1990年代初めの民主化により社会主義下の乳生産システムはしましたが、現在も都市の近郊で暮らす牧畜民が作る伝統的な乳製品が、都市の人々の食生活を支えています。

 実際に牧畜民の生活に触れ、畜産業の実態を調べる中で、都市近郊への牧畜民の過度な集中による環境破壊や、国際開発援助の問題など、モンゴルの直面する課題も明らかになってきました。なにげなく肉や乳製品を食べている日本人にも関わる問題です。

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