ある古書店で、1960年に撮影された「ねりもの」の写真を手に入れました。そこには、今も残る商店や看板などの景観にくわえて、当時の祭礼の情景が映し出されていたのです。「ねりもの」とは、祇園祭の期間中に祇園花街の芸妓たちが行列になって八坂神社にお参りし、練り歩く行事です。江戸時代以降、断絶したり復活したりしながら約200年受け継がれ、写真に映された1960年を最後に途絶えました。最初はきれいな装いをした芸妓が神社に拝みに行く行事でしたが、昭和初期にはテーマに沿った仮装をして行列するようになります。
このように変化をしながら現代に受け継がれている風習に、鴨川の「納涼」があります。現在の「納涼床」は、5月上旬から9月末頃まで鴨川西岸に飲食店が張り出した高床式の座敷をいいます。18世紀の絵図には、庶民が鴨川の中洲で夏の一夜を楽しむ様子が描かれています。大正期になると中洲での納涼は姿を消し、昭和初期に現在のような飲食店の張り出す納涼床へと変化したのです。
文学作品や古い絵図や写真を調べると、歴史やたくさんの物語が見えてきます。