地域の人々のコミュニケーションを彩る
豊かな方言

#094
言語教育情報研究課 教授有田 節子[写真左]
衣笠総合研究機構 専門研究員竹田 晃子[写真右]

 日本には全国各地に実に多彩な方言があります。その方言を文法的な立場から研究した事例を紹介します。

 1つは九州地方の「ギー」です。佐賀県でよく使われる「もし~なら」にあたる条件表現です。標準語の「タラ」は、「明日雨が降ったら」というようにこれから先に起こることを予測して述べる予測的条件文、「そこに行ったら会は終わっていた」のような過去の事実を表す事実的条件文のどちらとも使います。佐賀方言では、予測的条件文には「明日雨ん降っぎー」、過去の事実は「降ったぎー」とギーの前の時制形式を使い分けます。佐賀方言は標準語より時間概念が細かく表し分けられているのです。

 もう1つは、東北方言の「サル」です。例えば下りの坂道で自然に走ってしまうようなとき、「走らサル」と表現することがあります。意思にかかわらず動いてしまうことを表す便利な表現です。

 また、東北方言の体調を表すオノマトペ()の用例集も作りました。体調は方言で表されることが多い分野ですが、東日本大震災で支援にけつけた医師などが方言を理解する必要があったからです。方言は、地域の人々のコミュニケーションを豊かにするものなのです。

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