なぜ日本語母国語話者は
英語の音を聞き誤るのか?

#095
経済学部 教授野澤 健

 日本人は「」と「」の発音の違いを聞き分けられないとよく言われますが、なぜなのでしょうか。

 ヒトは生後1年前後で、母語では意味の区別に使われない音の違いにでなくなるといわれています。日本語の母音は「ア、イ、ウ、エ、オ」の5種類しか音がありませんが、アメリカ英語の母音はその倍以上で、私たちには同じに聞こえる音でも間違えると意味を聞き間違ったり、自分の意思を正しく伝えられなかったりすることがあります。「l」と「r」の間にも、英語では意味の区別に係わる音の違いがありますが、日本語ではどちらも「ラ行音」として処理されて、その違いを聞き分ける必要はありません。英語には他にも日本語にない音の区別があります。私たちが英語の音を聞き取るのが難しい一番の原因はこのような日本語と英語の音の構造の違いですが、それに加えて日常生活で英語のインプットが限られていることと、カタカナ語のがあると思います。元の英語の単語よりも日本語になった外来語を耳にすることが圧倒的に多く、英語のインプットが少ないこととの相乗効果で元の英語の発音もカタカナになった発音に近いと思ってしまっているところがあります。しかし、実際の英語の音は必ずしもカタカナ語からイメージされるようには聞こえません。特に母音は前後の子音よってかなり違って聞こえます。

 英語学習の早い段階からカタカナ表記やり字に影響されないよう、正しい発音を根気強く学ぶ必要があると思います。

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