公正であるはずのスポーツを
作っているのは誰?

#018
産業社会学部 准教授松島 剛史

 2015年に開催されたラグビーワールドカップで日本代表が大会史上初の3勝を挙げ、日本中を沸かせました。その快挙と同じくらい話題になったのが、日本代表チームにいわゆる「外国人」選手が多く含まれていたことです。ラグビーの代表資格規定は、「当該国での出生」「両親と祖父母のうち1名の出生」「36ヶ月以上の居住」の3つの条件のいずれかを満たせばどの国からでも代表選手として国際大会に出場できます。

 この規定は、多くの植民地を抱え、世界の六分の一を支配していたとすら言われる大英帝国にルーツを持つもので、イギリス本国に暮らす植民地住民を代表選手として選出する際の基準でした。イギリス帝国主義時代の遺産が多民族的多国籍的な日本代表チームを生み出したのです。「外国人」と日本人が共に勝利を目指して闘う日本代表チームの存在は、日本代表は日本国籍を持った日本人であるべきという「常識」をゆさぶり、新しい日本人イメージを社会に発信しています。私たちは現行のルールやスポーツのありようを何の疑いもなく受け入れています。でも、その背景を探ると、未来の日本社会を作っていくヒントが見えてくるのではないでしょうか。

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