前田 信彦さん

立命館大学 キャリアセンター 部長

近年グローバル化の進展に伴い、日本企業は国際的な競争にさらされています。採用試験においても「質の重視」を一層強く求める「厳選採用」が最近の特徴です。そんな中、学生の気持ちも焦りがちになり、ついついTOEICなどの資格取得や「〜力」といったスキルアップのフレーズが気になるかもしれません。

しかし、今の学生に必要なことは「社会人基礎力」に代表されるような技能・コミュニケーション能力のみではありません。企業が学生に発する問いの本質は、学生生活で培われた学生一人ひとりの「経験と成長」であり、さらにそれを自らの言葉で伝えることができるかという点です。

例えば、留学先で言葉が通じず心が折れそうになった時、サークルで仲間とのコミュニケーションがうまくいかずに悩んだ時、研究に行き詰まった時、どのようにその苦境を乗り越えたのか、その経験は自分の人生においてどのように役立ったのか、また、どのような意味を持っているのかを学生自身が振り返ること。さらに、それを企業や社会で活かしていけるかどうか、そこがポイントだと思います。なぜなら、壁を乗り越えて成長してきた経験は、社会での困難を乗り越える力となるからです。

もうひとつ、私たちが認識しなければならないことは、現在、企業の求めている人材像の価値基準が必ずしも普遍的なもので正しい、とは限らないということです。なぜなら、企業・組織の考え方や働く人に求める技能・スキルの内容は、時代とともに移り変わっていくものだからです。つまり、自分の人生や価値をすべて企業標準化して考え過ぎないことも大切です。その意味では、私たちは「仕事の目的(finis operis)」と「仕事をする人の目的(finis operantis) 」は違う、ということもあらためて理解しておく必要があるでしょう。

卒業後の長い職業人生の中で、企業や組織の一員として働く以上、企業に貢献することを通して、最終的には社会にどう貢献できるかが重要です。少し大袈裟にいえば、「働くこと」を通して「善き共同体の構築」にどう貢献できるか、そして「自らが成長できるか」を学生時代から少しずつ考えておきたいものです。そのためには、所属学部における学習目標と計画をしっかり定め、課外活動、海外留学、インターンシップなど、多様なプログラムを活用し、さまざまな学習と経験を積み重ねて下さい。本学の学びを通して、グローバル時代の荒波を乗り越える「逞しさ」を身につけ、未来に挑戦してほしいと願っています。

在学生のみなさんへ

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企画・取材・文/田中 裕太郎(文学部4回生)、岡戸 亜沙美(産業社会学部2回生)、鈴木裕加(産業社会学部2回生) 企画/佐藤 陽(政策科学部2回生)、山内 快(経営学部2回生)