2009年4月25日 (第2893回)

〈外地〉における日本語文学 ― 解明とデータベース化への試み ―

文学部教授 木村 一信
ポストドクトラルフェロー 楠井 清文

 「外地」という言葉は、日本固有の領土以外に、第二次世界大戦終結時まで我が国が領有していた地域を指す。

 すなわち、台湾・朝鮮・樺太・南洋諸島などであり、また、広く、満洲や東南アジアの軍政地も、一般にはこの言葉で呼ばれたりしたこともあった。これらの地域では、現地の人々への日本語教育が行われ、やがて日本語を用いての文学作品が現れるようになる。現地に赴いたり、また定住したりする日本人と現地の人たちが共に文学活動をなし、少なくない作品が世に残された。

 が、それらはほとんど日本近現代文学の中に組み入れられず、また、それぞれの地域での文学史・文化史のうちにも位置づけられていない。日本語による「外地」文学の研究は、戦争や植民地支配という歴史と不可分ではあるが、文化的営為としての資料的解明もきっちりとなされなければならない時を迎えている。

 今回は「外地」文学の研究状況を紹介し、また現在発展の著しいデジタル技術を用いて資料の検索と閲覧を行うデータベースシステムを紹介して、それが研究にどのように有効であるか見ていきたい。