2018年8月25日 (第3247回)

平和創造に向けたスポーツの役割とは何か: ノルベルト・エリアスの「文明化の過程論」からのアプローチ

立命館大学産業社会学部 教授 市井 吉興

 気の早い話で恐縮ですが、2018年を振り返った時、「スポーツ」がこれほどまでに人々の関心を集めた年はないかもしれません。このエッセイが書かれた5月末までにも、2月に韓国平昌で開催された冬季オリンピック・パラリンピックでの日本選手の大活躍に私たちは心を躍らせました。しかし、その一方で、日本のトップスポーツ界で相次いで発生したスポーツ・ハラスメントは、人々に「スポーツ」への嫌悪感を抱かせたのではないでしょうか。このような「スポーツ」をめぐる対照的な状況を、私たちはどのように考えたらいいのでしょうか。

 この講座では、ノルベルト・エリアス(1897-1990)というユダヤ系ドイツ人社会学者が提示した「文明化の過程」という概念を用いて、上記のような事項にも触れながら、平和創造に向けたスポーツの役割を考えてみたいと思います。第一次世界大戦への従軍経験を持ち、第二次世界大戦時には故国を追われイギリスに亡命したエリアスが、この概念に込めた「希望」とはなにか?また、その概念のもと、エリアスはスポーツをどのように捉えようとしたのか?2020東京オリンピック・パラリンピックを迎える前に、一緒に考えてみましょう。