2019年1月19日 (第3265回)

近代日本のきもの文化 ―身装文化デジタルアーカイブにみる文化変容

国立民族学博物館 人類基礎理論研究部 外来研究員 高橋 晴子

 明治維新以降、我が国では政治・経済システム等の西洋化が推進され、その影響を受けて、日本人の衣生活は、様々な紆余曲折を経ながら和装から洋装へと移行していく。とくに国や官にかかわる人々は、必要に迫られて、かなりのスピードをもって西洋服装を受け入れていった。しかし、さしあたり洋装化の必要のない一般市民の衣生活は、洋装のグローバル化の波に乗りつつも、和装と洋装が拮抗する状態が半世紀以上も続いたのである。この時期、すなわち近代(1868~1945)に焦点をあてて、当時のひとびとの衣生活における文化変容の実態を見つめ、いかにして、今日の洋装生活に至ったのかを考える。 きものの着装の変化や、文化の記号だったともいえる女性の髪型の移り変わり、西洋のアクセサリーの受容の様子など、メルクマールとなる変容を、本身装文化デジタルアーカイブの画像データを確認しながら、解説する。写真、ポスター以外に、当時の新聞に掲載された連載小説挿絵が貴重な画像データとなっている。新聞連載小説挿絵の信憑性を検証することによって、絵空事に秘められたリアリティの世界を明らかにしたい。

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