2019年2月16日 (第3267回)

清水寺と土砂災害

立命館大学理工学部 教授 深川 良一

 奈良時代末期に創建された清水寺は、清水の舞台から眺める絶景とともに人々の心に強く刻まれ、現在も多くの観光客で賑わう京都屈指の観光地である。類まれな景観は、ただし、清水寺が急峻な山腹部に建設されていることを意味し、これはとりもなおさず土砂災害に対しては漸弱であることを示している。清水寺史には火災等に比べて土砂災害に関する記述は少ないものの、実際、過去に何度も大規模な斜面崩壊が発生していたことがボーリングデータ等から推定できる。最近50年間でも1972年の重要文化財・釈迦堂の全壊、1999年の音羽の滝近くの茶店の崩壊、2013年の境内斜面崩壊の多発等を経験している。近年の豪雨現象の激化、広域化は、清水寺における土砂災害に対する安定性に深刻な影響を与えており、ハード的な防災対策の推進とともに、観光客や清水寺関係者の命を守るソフト対策、すなわち効果的避難に向けた警報発令、誘導対策の構築が求められている。