2021年8月28日(第3340回)

「資本主義リアリズム」とオリンピック

立命館大学産業社会学部 教授 立命館大学国際平和ミュージアム 副館長 市井吉興

 2021年6月20日、緊急事態宣言が解除され、延期された2020東京オリンピックは開催に向けて、さらに大きく踏み出すことになります。しかし、IOCの幹部のなかには、緊急事態宣言下であっても開催することを公言した者もおり、そのような発言は多くの市井の人々、そして、アスリートを激しく動揺させるとともに、落胆させたのではないでしょうか。まさに、今次のオリンピックをめぐるIOCやステークホルダーたちの振舞いは、オリンピックに対する積極的な意義や意味を見出だすことを難しくさせています。しかも、新型コロナ感染症の感染拡大を理由にオリンピックの開催が延期されたこともあり、感染対策としての「新しい生活様式」を実践しながら、「オリンピックって、なんなの?」という、なんかモヤモヤとした気分や疑問が、私たちの日常生活から離れることがなかったとも言えるでしょう。そこで、本講座では、文芸批評家のマーク・フィッシャーによって示された「資本主義リアリズム」という言葉を手がかりに、オリンピックとオリンピックをめぐる社会の諸相について論じてみようと思います。