2021年9月25日(第3343回)

国境閉鎖と内陸国

立命館大学政策科学研究科 教授 宮脇 昇

 これほどにも長く国境を閉ざすことを誰が予想したであろうか。新型コロナウィルス拡大にともない、多くの国が国境を閉鎖し、人の移動を厳しく制限した。 海上国境しかない日本では、「水際政策」という言葉が容易に使われる。しかし日本の水際は、難民には厳しい一方で、他方でCOVID-19の拡散には対応が遅かった。日本のような島国と比べ、陸上国境しかない内陸国にとって、国境の開閉は重みがある。たとえばモンゴルでは、中国の周辺国の中では例をみない早さで全国境を閉鎖し、市中感染者を7か月にわたり抑え込んできた。しかしその後、帰国者を通じて感染が拡大し、数度のロックダウンを行い危機を乗り切ろうとしている。各国のワクチン外交の対象となり、日本よりも都市部のワクチン接種スピードは数段速い。むろん内陸国にとっても国境閉鎖は容易なことではなかった。人流の抑制は国際物流の遅延を招き、平時においても接続性の低いモンゴルの物資輸送は、コロナ禍で一層時間を要した。他の内陸国の事例をふまえて、内陸国の国境閉鎖について考える。