2022年5月14日(第3358回)
ミンダナオ和平とCOVID-19:人間の安全保障のエンパワメントの視点から
立命館大学国際関係学部 教授 石川 幸子
人間の安全保障の概念は、国連において日本が様々な形でその議論を牽引し、2012年には国際社会の共通理解(総会決議)という形で結実しました。この概念は、後のSDGsのコンセプトでもある「誰も取り残されない」社会のバックボーンになるものです。「欠乏からの自由」、「恐怖からの自由」、そして「尊厳を持って生きる自由」という3つの自由を核とする人間の安全保障は、上からの保護だけでなく、下からのエンパワメント(能力強化)があって初めて多様なダウンサイドリスクに対応できるとしています。 これまで、人間の安全保障については、多くの論文が発表されてきましたが、エンパワメントについて掘り下げた論考の数は多くありません。そこで、今回発表させていただく内容は、エンパワメントに焦点を当てたJICA緒方貞子平和開発研究所の “Human Security and the Practice of Empowerment in East Asia Research Project”の一環として執筆しているミンダナオのバンサモロ自治区におけるCOVID-19への対応とローカルコミュニティのエンパワメントについてのご報告となります。