2022年10月29日

人文・社会科学におけるモビリティ研究――「オフショア化する世界」のリスクに立ち向かう知

立命館大学文学部 教授 遠藤 英樹

 社会のあり方は、現在、大きくゆれうごきつつある。多くの人・モノ・資本・文化・イメージ・情報等が国境を超え頻繁に移動する「グローバル世界」に、私たちは生きている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする感染症も、こうしたグローバル化と深く関わっている。この感染症は、人やモノのモビリティ(移動)によってエアロゾル、そしてウイルスが世界中を移動し拡散しオフショア化された結果なのである。また2022年2月24日に始まったロシア連邦によるウクライナ侵攻も、ウクライナという限定的な地域のもとへ、多様な国々が関与するグローバルな戦争がオフショア化されたものだと解釈できる。現代においては、ウイルス、テロ、戦争、気候変動などによるリスクは、国境を越えていくグローバルな世界において現れ出るものとなっている。本発表では、現代社会が創り出すグローバルなリスクに立ち向かうために、人文・社会科学的なモビリティ(移動)研究に何ができるのかを問う。