2007年6月16日 (第2817回)

イタリア文学と民話-セレンディピティと物語の連鎖-

京都外国語大学 講師 橋本 勝雄

 「セレンディピティ」ということばをみかけたことはありませんか?「幸運な発見」を意味する英語として、科学的発見の方法論の分野にはじまり、いまでは映画や店の名前としても使われるこのことばを作ったのは、18世紀イギリスの作家ウォルポールです。

 おとぎ話『セレンディップの三人の王子』に登場する王子たちが、見ていないラクダの特徴をみごとに言いあてるエピソードから、偶然をきっかけに鋭い知恵によって思いがけない発見をする能力を彼はセレンディピティと命名しました。

 20世紀になって研究が進むにつれ、彼の読んだ話が1557年にヴェネツィアで出版された物語の翻訳であること、さらにこれに関連する民話、文学作品が世界各地にあることがわかってきました。

 当日の講座では、この物語を中心に、さまざまな地域・時代が物語を通して結びつく様子を描きだし、文学と民話の関係について考えてみようと思います。