「優勝、JAPAN!!」というアナウンスが会場に響き渡ると同時に、抱き合って喜ぶチアリーディング(以下、チア)日本代表のメンバーたち。その歓喜の輪の中にキャプテンとして牽引してきた大西さんの姿があった。

「ミスがあったことで、改めてチーム全員の気が引き締まりました」。2017年11月11日に開催された「第9回チアリーディング世界選手権大会」男女混成部門の準決勝、1つのミスがあったものの、1位通過した日本代表。翌日の決勝戦では見事ノーミスで2分30秒の演技を終えた。大西さんの熱い気持ちはもちろん、メンバー全員が同じ目標に向かい、同じ気持ちで手繰り寄せた優勝だった。

しかし舞台裏では、大西さんの笑顔からは想像できないことが起きていた。決勝戦前のウォーミングアップ時に、靭帯を損傷するアクシデントに見舞われたのだ。「今まででの厳しい練習が頭の中を駆け巡って…。諦めたくない、諦めるわけにはいかないと決勝に挑みました」。納得いく演技をしたい、その気持ちで痛みを忘れ演技に集中することができたのだろう。

チームスローガンは「鳥肌・ダイナミック・衝撃を与える演技」

全国の大学や社会人チームから19人が集まり構成された日本代表。それぞれの特徴を生かし、限られた時間でチームをまとめるのに苦労したが、いろいろな人の意見を聞くことができ視野が広がったという。また誰よりもメンバー一人ひとりの性格を把握し、理解するのに時間を費やした。「絆が大切な競技なので、そこは妥協せずにとことん話し合いました」。揺るがない信念を持ち、駆け抜けた大西さんの代表での戦いは、チア強豪国日本の復活優勝という形で幕を閉じた。

笑顔いっぱいに演技し観客を魅了

幼少期からクラッシクバレエやダンス、中学時はバスケットボールをしていたが、高校では新しいことをしたいと思い、好きなダンスを生かせるチアを始めた。全国屈指の強豪校である箕面自由学園高等学校に進み、厳しい練習に耐え、JAPAN CUP2連覇、全日本高等学校選手権大会2011年度、2013年度優勝という輝かしい成績を残した。「落下すると、ケガ、命にも関わる競技なので無責任なことはできません。高校では技術面はもちろん、人間的にも大きく成長しました」

チアの新しい魅力に惹かれて

大学ではよりダイナミックな演技をしてみたいと思い、男女混成の立命館大学応援団チアリーダー部PeeWeeS!の扉を叩いた。男子が加わることで技のバリエーションが増え、今までと違うチアの魅力、面白さを感じていった大西さん。漠然と目標としていた“日本代表”という夢は、目指すべきものへと変わっていった。2年に一度開催される世界大会に向けての代表選考会に2回生のときに初挑戦したが、結果は選考落ち。悔しさを胸に、大学での練習に真摯に取り組み、PeeWeeS!として大会に出場したり、応援団として体育会の試合を盛り上げたりと忙しい日々を送ってきた。

二度目の挑戦で念願だった代表入りをし、キャプテンとして今回の優勝に大きく貢献した大西さんはいう。「一人しか味わえない代表のキャプテンを経験できたことは光栄なこと。過ごした3カ月間、辛いと感じたことはなかったです。『全力でやれることはやる!!』チアで学んだことは必ずこれから先も私の強みになっていくと思います」

PROFILE

大西真菜美さん

箕面自由学園高等学校(大阪府)卒業。産業社会学部スポーツ社会専攻、塩見俊一ゼミでスポーツ心理学、スポーツの歴史について学ぶ。PeeWeeS!では副部長を務める傍ら、Aチーム(TOPチーム)のキャプテン、振付けを担当。卒業後は旅行業界で働きながらチアを続け、2018年3月には社会人チームとして西日本大会に出場予定。

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