「チーム日本一、プロ野球を目指して」明治神宮野球大会で10者連続奪三振の大会新記録を樹立
全国の強豪が集い、秋の学生野球日本一を決める「第56回明治神宮野球大会(大学の部)」で、創部以来初の準優勝に輝いた立命館大学体育会硬式野球部。大会初戦、六回から二番手で登板し、圧巻の投球を見せたのは有馬伽久さんだ。10者連続奪三振で、53年ぶりに最多連続奪三振の大会記録を更新した。「第45回日米大学野球選手権大会」に出場する侍ジャパン大学代表にも選出された経験を持つ有馬さんの目標は「チームとして日本一」、そしてプロ野球からドラフト一位で指名を受けることだ。これまでの軌跡と今後の抱負を語ってくれた。

立命館大学出身の東投手に憧れ、セレクションに参加
野球を始めたのは小学一年生の時。地元の少年野球チームに参加し、中学では学校の軟式野球部に所属。高校は数多くのプロ野球選手を輩出した愛知工業大学名電高等学校へ。高校2年生まで外野メイン(5番ライト)で活躍していた有馬さんは進学を希望し、当時プロ野球を目指す進路は現実味がなかったという。
「当時から目標としていた選手は、横浜DeNAベイスターズの東克樹投手です。関西圏で進学先を探す中で、東投手の出身でもある立命館大学を志望し、練習(セレクション)に参加させていただきました」。
高校2年生の冬以降のトレーニングでピッチャーとして頭角を現した有馬さんは、高校3年生時の夏の甲子園(全国高校野球選手権)で、エースとしてもチームを牽引。大学進学後、1回生の春からベンチ入りし、2回生秋の関西大学戦で初勝利を飾った。

「投げても勝てない」壁を乗り越えた大先輩のアドバイス
大学3回生で、「令和7年度関西学生野球連盟春季リーグ戦」最優秀投手賞を受賞し、さらに「第45回日米大学野球選手権大会」に出場する侍ジャパン大学代表として選出された有馬さん。立命館大学硬式野球部は「令和7年度関西学生野球連盟秋季リーグ戦」にて劇的なサヨナラ勝ちで6年半ぶりのリーグ優勝に輝いた。一方で、有馬さん自身にとって秋季リーグ戦は決して好調ではなかったという。
「チームが躍進する一方で、個人としてはピッチャーで投げたとしても、勝ってチームに貢献できているような感覚がなく、焦りが募りました。トレーナーに相談し、フォームやトレーニングを見直しながら、一人で考え込む時間もありました」。
脱却できたのは、「第56回明治神宮大会 関西地区代表決定戦」の三回戦だったと振り返る。秋季リーグ優勝直後に、立命館大学のOBでもあり、日本プロ野球のオリックス・ブルーウェーブと米メジャーリーグでも活躍した長谷川滋利さんと対談(※)。その後も交流が続き、関西地区代表決定戦の一回戦後に長谷川さんから助言を受けた影響が大きいと語る。
「深呼吸をすること。自分の一番調子が良かった映像を思い浮かべること。メンタル面でのアドバイスが特に自分の心に響き、気持ちが晴れていくことで好投にも繋がっていきました」。
そして、迎えた「明治神宮野球大会」の初戦。初戦当日は調子の良さを自身でも実感していたという。10者連続奪三振の新記録を樹立した。立命館大学の飛躍に拍車をかける立役者となった。
※詳細はプロ野球への夢と未来を語り合うー。硬式野球部・有馬伽久投手×OBで元米メジャーリーガーの長谷川滋利さんを参照。

準優勝の瞬間、視線の先に映ったもの
二回戦で強豪をおさえ、全国制覇に向けてチーム全体の士気が高まっていた立命館大学。決勝戦の相手とは、個々の選手で比較すると実力差があったものの、チーム力として勢いに乗っていた。「このまま優勝する」と鼓舞して挑んだ決勝戦。しかし、緊張感に満ちた投手戦を制したのは、相手校だった。準優勝が決まったとき、相手校がマウンドで歓喜に沸く姿を一点に見つめ続ける有馬さんの姿があった。その時、何を思っていたのだろうか。
「100年以上の歴史を持つ立命館大学硬式野球部は、創部以来初の準優勝に輝きました。しかし、自分の中ではうれしさよりも、やはり悔しさがありました。相手校を見つめていたのは、自分の一番良いビジョンをイメージするためです。『来年はあの舞台に自分がいる。次は絶対に日本一になって、マウンドで仲間と喜びの瞬間を分かち合う』と目に焼き付けていました」と、有馬さんは心境を語った。
「自分の一番調子が良い映像を思い浮かべる」。長谷川さんからのアドバイスを受けた際にも有馬さんがイメージトレーニングしたように、準優勝で終えた瞬間から、彼の中では次の未来を思い描くことが既に始まっていた。

ドラフト一位指名を目指して
来年は大学4回生となり、学生として最後の競技生活となる有馬さん。今まで最上回生だった先輩たちは卒部となり、新体制のチームが始動となる。目標は明確だ。
「来季は立命館大学硬式野球部として、悲願のチーム日本一に挑みます。そして、個人としての将来の目標は、プロ野球選手になることです。ドラフト一位指名を受けられるような選手として、来季も活躍を見せていきたいです」と、有馬さんは意気込みを語った。野球と真摯に向き合い、一球入魂でマウンドに立つ有馬さん。目標に向かって着実に進む彼の姿をこれからも追い続けたい。

PROFILE
有馬伽久さん
奈良県出身。愛知工業大学名電高等学校出身。左投げ左打ち。
野球をする上で自身のモチベーションを高める言葉は「俺、参上」。父からの助言で高校時代に帽子へ書いていた言葉は、現在、グローブに記す。

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