プロ野球への夢と未来を語り合うー。硬式野球部・有馬伽久投手×OBで元米メジャーリーガーの長谷川滋利さん
関西学生野球秋季リーグで12季ぶり(コロナ禍中止を除く)の優勝に貢献したエースの有馬伽久(がく)投手(産業社会学部3回生)と、OBでプロ野球のオリックス・ブルーウェーブと米メジャーリーグ(アナハイム・エンジェルス、シアトル・マリナーズ)でも活躍した長谷川滋利さんが、感動の渦に包まれた優勝直後、今と未来に向けて熱く語り合いました。勝ち点を挙げれば優勝が決まる伝統の「立同戦」初戦に先発し、勝利を収めた有馬投手が、2回戦では同点の9回から熱血登板。延長10回、サヨナラ勝ちを呼び込む投球と打撃を披露し、見事に6年半ぶりの栄冠を勝ち取りました。来秋のドラフト候補左腕が、プロ入りと将来のプランを長谷川さんに打ち明けると、「わかさスタジアム京都」で当日、現地観戦した大先輩からは自らの体験談や長期の目標設定に加えて、メンタルトレーニングの重要性などを優しくアドバイス。さらなる飛躍を目指す有馬投手には、米メジャーリーグ挑戦の偉大なパイオニアのひとりとなった長谷川さんとの絆が深まる貴重な時間となりました。
――延長10回裏1死一、二塁から坂下晴翔選手がサヨナラ二塁打を放ち、全チームから勝ち点を挙げる完全Vを達成しました。ベンチを飛び出した選手はホームベース付近に殺到し、祝福のテープが投げ込まれる、まさに感動の一瞬でした。
長谷川滋利さん(以下、長谷川):優勝が決まった瞬間はどうでしたか?
有馬伽久投手(以下、有馬):本当に最高ですね。
長谷川:私が(母校の試合を)見に来たら大概負けているので、優勝が決まったのは有馬くんのおかげかもしれない。同点の展開でマウンドに立って、相手の攻撃を完璧に封じてくれたから。スコアが3―3だった9回から登板したね。同点でも行くと、片山(正之)監督から言われていたの?
有馬:はい、言われていました。でも、1イニングだけだと思っていました。8回、同志社に同点に追いつかれて、ここから(勝ち越しの)1点を取られたらきつい。どんな状況になってもゼロに抑えたらOKだと思って投げました。
――有馬投手は9回から同志社打線を2イニング封じ込み、バッティングでは10回に敵失を誘う痛烈な打球でサヨナラ勝ちのチャンスをメーク。愛工大名電時代、2年夏の甲子園では控え投手で主に「5番・右翼」で出場し、9打数6安打で打率6割6部7厘をマーク。3年夏の愛知県大会4回戦では満塁本塁打を放つなど、打撃にも大いに定評があります。「持っている男」にちゃんと打順が回ってきましたね。
長谷川:9、10回と同志社を抑えて打席を迎えた。ネクストバッターズサークルでいいスイングをしているのを見て驚いた。野手と比べてもスイングはかなりいい方ですね?
有馬:バッティングには自信があったので。
長谷川:バッティングもちゃんと練習しているのですね。
有馬:たまにしています。
長谷川:打席が来た時は絶対に決めてやろうと思っていたでしょう?
有馬:はい、絶対に決めてやろうと…。
長谷川:有馬くんで(サヨナラ勝ちが)決まっていたら、もっと劇的だったけど、チームスポーツですから。
――有馬投手は以前から最終カードの同志社戦で優勝を達成したいと話していました。その言葉通り、ライバルを倒し最後に歓喜の優勝を決めました。
長谷川:そういうことを言っているから、ギリギリの優勝になったんじゃないかな?(笑い)。勝ち点落とせば、勝率差で近大の優勝だったのでしょう。楽勝で同志社戦の前にやっつけないと。でも、同志社戦で(優勝を)決める、これ、盛り上がるからなあ。
有馬:多くの応援、声援を受ける同志社戦はやはり特別感があります。
長谷川:私も4回生の春、秋とも同志社戦でどちらかが勝ったら優勝という試合を経験してね(春は立命館、秋は同志社が優勝)。観客があふれんばかりにスタンドにいて、立命館だけだとそこまで盛り上がらない。もし、1勝1敗になっていたら、有馬くんなら明日も投げられたんじゃないですか?
有馬:先発だったら厳しかったかもしれません。
長谷川:(有馬くんが投げないと)負けてたのでは?
有馬:3回戦まで行くことは考えていませんでした。
長谷川:私は大学では1、3回戦によく投げたけど、今はどこも肩を大事にしてくれてますね。大学を出てオリックスに入団した時の投手コーチが現役時代、剛球投手だった山口高志さん(関大、松下電器、阪急ブレーブス)。関大時代は1、2、3回戦と、救援も含めほとんどの試合に投げていて、プロに入って故障したと聞いているので、有馬くんにはあまり無理はしないようにしてほしいな。
――関西学生野球(旧関西六大学を含む)で通算最多勝利は山口高志さんの46勝。長谷川さんは山口さんに次ぐ2位で通算40勝を記録しています。今日、有馬くんの投球を見た印象はどうですか。
長谷川:これまで後輩たちをたくさん見てきたけど、そのなかでもマウンドさばきがすごくいいと思います。それにまだまだ伸びしろがある。今日も変化球が少ないでしょう。(色々な球種を練習で)投げられる、投げられないは別にして。(ストレート、スライダー、ツーシームなどに加え、球種を増やしたいと聞いているが)これからじっくりと1個ずつ覚えていったらいいのでは。私も学生時代、ストレートとスライダーしか投げていなかった。たまに遊び感覚でスプリットを投げていましたね。でもプロに行って先発したら5連敗。日本ハムの主砲だったマット・ウインタースに大事な場面で打たれていて、そこで彼を封じるためにチェンジアップを覚えた。そこから彼には打たれなくなった。
――有馬投手は将来が楽しみな後輩ですね。
長谷川:変化球を1個ずつ自分のものにして、毎年モデルチェンジしていけばいい。力は私よりあるし、しかも有利なサウスポー。すごく楽しみな後輩です。ぜひ米メジャーリーグに行ってよ?
有馬:えっ? はい。
長谷川:確か横浜DeNAベイスターズのエースで高校(愛工大名電)、立命館の先輩でもある東投手を目標にしていますね。
有馬:はい、東さんに憧れています。
長谷川:私は東くんとも何度か話しているけど、彼はもっとボールのスピードを出したいと言っていた。東くん、有馬くん、2人とも米メジャーリーグに行ってくれたら、本当に嬉しい。(東、有馬両投手と同じ左腕でシカゴ・カブスの)今永(昇太)投手を見てよく分かるように、(どこまで通用するか)米メジャーリーグのイメージが自然に湧くでしょう?
有馬:確かにそうですね。
長谷川:立命館からプロ野球選手は多く輩出しているけど、米メジャーリーガーが少ない。私の(米メジャーリーグでの)ゴールよりも有馬くんにはもっともっと上を目指しほしい。
――長谷川さんはオリックス・ブルーウェーブにドラフト1位で入団し、1年目から12勝9敗の好成績を挙げて新人王に輝きました。NPB6年間で57勝45敗の成績を残し、97年にMLBのアナハイム・エンジェルスと契約。救援で全て10勝するなど、主にリリーフで活躍しました。2002年からはシアトル・マリナーズへ移籍し、MLB通算9年間で517試合に登板し45勝44敗。日本人の米メジャーリーグでの登板数は歴代1位です(2位は上原浩治投手の436試合登板)。セットアッパーでも適正をいかんなく発揮しました。
長谷川:日本人で一番投げました。毎日、リリーフで準備して…。でも有馬くんは先発で頑張って、どうか私の記録は抜かないでください(笑い)。いい大学出身なのだから、頭を使って活躍してほしい。私は4年生になって単位は2、3個だけ残して、3年間頑張って来たのに、もし最後で単位を落としたらどうしようと思って、すごく緊張したことを今でも覚えている。
有馬:僕も4年間で卒業できそうです。4年間でプロへ行かないと…。
長谷川:今となってはいい思い出だけど、しっかり卒業してくださいね。
――話は変わりますが、お二人がお会いするのは? 有馬投手から見た大先輩の長谷川さんの印象はいかがですか?
有馬:お目にかかるのは2回目です。昨年、(練習拠点の京都市北区にある)柊野グラウンドに来ていただいて、色々とアドバしスをしていただきました。
長谷川:数年に一度、グラウンドに行かないと(母校の)様子が分からなりますから。有馬くんは当然知っていて、去年(グラウンドに行った時に)は話をしましたね。
有馬:はい。長谷川さんのプロフィールを見た時、大学通算40勝というのが驚きで、そんな数字を僕は考えられなくて…。
長谷川:私の場合は、ラッキーで1年生から、先発で使ってもらいました。
有馬:僕も1年の春から投げさせてもらっているけど、負けることが多いので…。投げる試合は勝ちたいし、勝ち切れるようにしたいと思っています。
長谷川:それはプロへ行っても一緒。プロでも先発でやりたいんでしょ?
有馬:はい。そうです。
――長谷川さんは日米大学野球選手権大会で日本代表に選出され、その大舞台で自信を得てアメリカの実力を実感するなど、野球人生の転機になったそうです。有馬くんも3回生の今年、始めて侍ジャパン大学代表に選出されました。
長谷川:日米野球が一番刺激を受けました。(私が2回生の)1988年にソウル五輪があって、アメリカはドラフト1位の選手ばかり集めて、相当な強豪だった。日米大学野球でも真の全米代表チームが出場してきて、その相手を抑え込めた。大学2年生で選ばれたので、上級生にいい投手がいたから、リリーフの役割を担いました。リリーフで投げると全力で投げることができる。だからスピードが速くなるし、自信もついた。有馬くんも日米大学野球は楽しかったでしょう?
有馬:すごく楽しかったのを今でも覚えています。
長谷川:どちらかというと、アメリカより日本代表選手に感化されたと聞いたけど。
有馬:もちろん投手もそうだったですけど、打者もレベルが高くて、自分を知るいい機会になりました。
長谷川:私の時はいい選手がたまたまアメリカ代表に集まっていてね。1990年の時はそれほどではなかったけど、それでも5、6人の選手とは仲良くなれた。アメリカの選手は覚えておいた方がいい。米メジャーリーグへ行ったら対戦するから。
――長谷川さんが日米大学野球で直接対戦して、特に印象に残っているアメリカの選手はいますか?
長谷川:例えばソウル五輪にも出場したロビン・ベンチュラ。2012年からシカゴ・ホワイトソックスの監督を務めて、現役時代は250本塁打を放ち、なおかつ三塁手で5度、ゴールドグラブ賞を受賞した。日米大学野球では勝つことはできたけど、ベンチュラには3安打された。米メジャーリーグへ行っても彼は私のことを覚えてくれていました。向こうでは彼に全く打たれなかったです(笑い)。アーロン・シーリーは4回生の時のアメリカ代表で、米メジャーリーグ通算148勝の右腕。こういう体験を含めて、大学日本代表に入るのは楽しいことだです。米メジャーリーグは夢じゃない。私のようなこんな体のサイズでもできますから。
――数々の経験値をお持ちの長谷川さんにとって、有馬くんが目指すプロ野球選手の一番重要な心構えとは何でしょうか。
長谷川:有馬くんは力が十分にあるけど、私は自信だけは持っていた。「なんの裏付けもない自信」だけどね。オリックスで山口コーチに言われたよ。「お前はほんま、自信だけやなって」。でも、それが宝だった。状態が悪い時でも中継ぎでマウンドに上がって、相手の打者に打たれたら、次の試合はちょっとビビるはず。でも、私は「絶対に打たれない」と、おどおどすることもなかった。
有馬:どうしてそれほどの自信を持てるようになったんですか。
長谷川:相手打者を研究することもそうだけど。投げるボールは急には速くならない。なので皆と違うことでプラスアルファになる何かを探すことが肝心です。日本のプロ野球でも今ではちゃんとデータは出てくるけど、それよりもメンタルトレーニングを絶対にやった方がいい。技術として必ずプラスになる。
有馬:自信の秘訣はメンタルトレーニングですね。
長谷川:私の時代は走って体力をつけて、ついでにメンタルを鍛えろって感じで。それでもいいけど、メンタルを真剣に鍛えれば、それ以上のスキルを身に着けられる。本を読んだり、今ならウェブサイトでリサーチしても、メンタル面のサイトは見つけることができる。
私は(米国で)プロゴルファーを少しやっているけど、長いキャリアでゴルフクラブを握っている人は、クラブが手のようになっている。私にはそこまで長く時間をかけた技術がないから、メンタル面を鍛えています。
有馬:あまり目が行き届かない部分ですね。
長谷川:教えてくれる人があまりいないですね。
有馬:僕にはメンタルトレーニングというもの自体が分からない。どういうことをすれば鍛えられるのですか。ぜひ、長谷川さんにお聞きしたいと思っていました。自分には最も足りていない点だと感じているので、次のステップに行く時に一番大事なことだと思います。
長谷川:正直言って、日本のプロ野球でも、米メジャーリーグでも、まだ進んでいない分野。今は情報社会だからベンチで自分の画像を見て分析したりしていますが、それは皆がやっていること。いくらでも情報が入ってくるから。でも、外側のことだけではなくて、心の内側のことを指摘し、考えることが重要だね。
有馬:野球選手として、ひと皮剥ける大きなチャンスになりそうです。
長谷川:私は武道や相撲が好きでよく見ますが、彼らはすごくメンタルをやっている。大けがや、死の恐怖と向き合っている。アメリカンフットボールでもそうかもしれませんが、その恐怖心を抑えるためにはどうするか。マウンドに立っていても恐怖を感じることがあるでしょう。ただ、武道のように死ぬ恐怖は少ないはず。恐れをなさない、恐れを消す。メンタルを鍛えている競技は他にもいっぱいある。急にトレーニングをしても、メンタル面はすぐに強化されるものではないから、有馬くんとはじっくりと話をしながら向上させていきましょう。
――先ほど話題が出たように、有馬投手の目標、憧れの存在がDeNAの東投手です。東投手は2回生の秋、左肘痛を発症したため登板しませんでしたが、治療と下半身の強化に専念し、3年春にMVPを獲得。チームを3季連続優勝に導きました。2度のノーヒットノーランも達成しています。
長谷川:東くんのような技も必要だね。東くんとは年はどれだけ離れていますか?
有馬:東さんが8歳上になります。
長谷川:東くんも関西学生リーグで4度優勝しているんだね。優勝して東くんに言いたいことはある?
有馬:東さんの記録を全部抜きたいと思っていて、高校(愛工大名電)では3年の夏の甲子園で41年ぶりのベスト8に入ることができました。大学でも通算勝利の19勝も含めて、全て抜いて行くぞ! の気持ちでいます。まず、一つ優勝できて良かったです。
――有馬投手のもう一つの目標が立命館大学初の日本一。長谷川さんも達成することができませんでした。
有馬:秋は関西選手権で3つ勝たないとまず、神宮に行けないので、喜んでばかりはいられません。
長谷川:そういうゴール設定が大事。私が高校の時は米メジャーリーグへ行きたいなんて、思ってもいなかった。そのゴール設定の仕方もメンタルトレーニングの一つ。3年後、5年後、10年後…、トップを目指すためにどうするか?有馬くんは短期の目標設定はできていると思うので、これからは長期の目標を立てた方がいい。例えば、けがをした、スランプに陥った。そんな時も常にゴール地点を考えていたら、心が挫けにくい。
有馬:はい、よく分かります。
――一方で長谷川さんも大学時代に憧れていた投手はいたのですか?
長谷川:私は広島の北別府(学)さん、西武の東尾(修)さんでした。私は球が遅かったので、二人に成り切ろうと練習していました。今日は北別府さんのフォームで、明日は東尾さんのフォームで投げたり、これが意外に良かった気がします。高校(東洋大姫路)では、「こうやれ! ああやれ!」と上からの指導で非常に厳しい学校でしたが、大学ではすごく優しい監督さん(中尾卓一監督)だったので、遊び心を少し持って自由にやらせてもらいました。
――北別府さん、東尾さんと言えば、やはりコントロールですね。
長谷川:そう、コントロールが一番磨きやすいポイント。米メジャーリーグでもボールの威力がある投手は多いけど、有馬くんにはそこ(制球力)を絶対に求めていって欲しいな。私の短期の目標はプロ野球に進み、長期の目標は米メジャーリーグへ行くことだった。野茂(英雄、近鉄バファローズからロサンゼルス・ドジャースほか)くんの前に、誰も日本人がいない時に行きたかった。今は大谷翔平くんや佐々木朗希くん(ともにロサンゼルス・ドジャース)らが在籍していて、米メジャーリーグを想像しやすいでしょう。誰もやったことがないゴール…。日本人初の米メジャーリーグの監督になる目標を立ててもいい。「誰もやったことがない」そんな目標が欲しいな。目標の立て方が上手だと、気持ちが常にワクワクする。ワクワクしないと目標は達成できない。大谷くんがそう。とんでもないことを実行できるのは、とんでもないことを考えているから。
有馬:長期の目標設定のお話を聞いて、すごくいいことだと思いました。
長谷川:朝起きた時でも。寝る前でもいいし、10分でもいいから考える癖をつけた方がいい。私は現役時代からずっと日記をつけています。
有馬:実はこの秋、思うようにいかなかった時、第3節の関学戦に負けた時ですけど、今の気持ちを書き留めたいなと思って。それからノートを買って日記をずっと書いています。
長谷川:紙に書いてるの? それは素晴らしいな。私は一番大事な時のノートをなくしたので、今は携帯電話のアプリに打ち込むようにしています。
有馬:書き方とか、どういうことを書いたらいいか、教えていただけますか。
長谷川:普通でいい。思い立ったことを書けば。形式だったやり方で書いていると、邪魔くさくなるし、調子がいいと書かずに抜ける時がある。抜けてもいいけど、本当に感じたことを書き込んでいればいい。自分の財産は、それを読み返す時なので。こんなことを考えていたのかと…。
――有馬投手も今日が優勝できた日だと日記に綴り、いつか読み返して欲しいですね。
長谷川:そう、どの人の伝記よりも、自分の伝記の方がためになるから。
有馬:小学校から野球を始めて、優勝は初めてかもしれません。
長谷川:成功体験も大事だよ。私は中学校(兵庫・宝殿中)の時、全国中学校軟式野球大会で優勝したけれども、そのイメージでそのまま高校に持って行けなくてね。(高校3年の夏の)甲子園ではベスト8まで行ったけど、優勝できるチームだったのに勝てなかった。振り返ると、あそこで成功体験を思い浮かべる必要があった。
――長谷川さんは立命館大学のスポーツ能力に優れた特別選抜入試試験に合格した第1期生ですね。
長谷川:スポーツ推薦で入学して良かったのは、必ず卒業しないといけないので、授業にもちゃんと出席させてくれたことです。野球の後のキャリアも大事ですから。
有馬:これまで多くのお話を伺って、プロ野球へ進む気持ちはさらに強くなりましたし、もっとさらに具体的な目標やイメージをしっかり立てて、大学生活の残り1年間を有意義に過ごしたいと強く感じました。
長谷川:確かにクリアなゴールを作ることは大事。私はゴール設定しか、長所がなかったので、そこだけは真似してもらったら嬉しい。
――それでは来年の大学生活のラストイヤーに向けて、有馬投手の決意を聞かせてください。
有馬:チームとしては日本一。個人としては4年生エースとして大学ジャパンで活躍して、ドラフト1位でプロに入る。これは大学入学前に立てた目標なので、そこは絶対に達成したいです。
長谷川:ドラフト1位!きっと大丈夫!今の感じで行けたら。
――長谷川さんには最後に有馬投手をはじめ、後輩たちにこれだけは伝えておきたいこととは何でしょうか。
長谷川:私たちの時代と比べて、今の学生たちはやり方、楽しむ方法を十分に理解している。それはぜひ継続して欲しい。楽しいことはいつまででも続けられるでしょう。しかし、しんどい、苦しいことでも楽しいことに転換できる発想も大事。好きなプレステーションなどのゲームをやっていれば、あっという間に時間が経つ。そんな感覚で練習ができたら最高だと思う。そうすれば大谷翔平くんみたいになれる。それが一番だと思います。
◇有馬伽久投手のプロフィール 奈良県出身。小学校1年から野球を始め、愛工大名電では2、3年の夏の甲子園に出場。3年生の時、エースとしてチームをベスト8に導く。立命館大学産業社会学部に進学。1回生の春からベンチ入りし、2回生秋の関大戦で初勝利を挙げ、3回生の今春は4勝をマーク。最優秀投手賞を受賞し、侍ジャパン大学日本代表にも選ばれた。今秋は3勝を挙げ、最終節の同志社戦では連投し、エースの貫禄を見せつけた。大学通算成績は9勝12敗。身長175センチ、体重77キロ。左投げ左打ち。
◇長谷川滋利さんのプロフィール 兵庫県出身。57歳。東洋大姫路で甲子園に3度の出場を果たす。立命館大学経営学部に入学し、関西学生野球で通算40勝を記録。ドラフト1位でオリックス・ブルーウエーブに入団した1991年、12勝9敗1セーブで新人王に輝く。97年にアナハイム・エンジェルスと契約し、村上雅則、野茂英雄に続き、日本人投手3人目の米メジャーリーグ勝利を挙げた。2002年にシアトル・マリナーズに移籍。オールスターゲームにも出場し、米メジャーリーグ通算517試合登板は日本人歴代1位。2006年1月に現役引退を表明した。引退後は解説者などを務めるほか、ブルーウエーブの後継球団であるオリックスバファローズのシニアアドバイザーに就任した経験もある。立命館大学評議員。右投げ右打ち。



