大学生の立場で盲導犬にできること

店舗や施設の入り口などの目立つ場所に表示して、「身体障害者補助犬のことをもっと知って、ほじょ犬ユーザーとほじょ犬を社会の仲間として受け入れてください」という意味が込められている「ほじょ犬」ステッカー。補助犬とは、身体障がい者の生活を手助けする盲導犬や介助犬、聴導犬のこと。平成14年10月から施行された身体障害者補助犬法では、公共施設や公共交通機関、飲食店などを身体障害者が利用する場合、身体障害者補助犬の同伴を拒んではならないと義務づけられている。しかし施行から10年以上たった現在でも入店拒否や乗車拒否されるケースがなくならない。

2015年9月、この「ほじょ犬」ステッカーを立命館大学のキャンパス内に貼付した学生たちがいた。盲導犬の理解と周知を目的に活動する盲導犬支援サークル「とるて」だ。大学に働きかけたのは、当時代表の藤井さん。盲導犬に関する痛ましい事件をきっかけに「若い世代である大学生がもっと盲導犬について学び、理解していたら、社会全体がより暮らしやすくなるのでは」と思い立った。

「とるて」は、2013年秋にサークルとして認定され活動を開始。前身は藤井さんの先輩が発足させた自主ゼミ団体で、藤井さんが1回生で加入したときのメンバーは4回生6人と藤井さんを含む1回生2人の計8人。サークル認定を機に藤井さんが代表を引継ぎ、以降4年間務めてきた。活動は盲導犬や視覚障がい者の勉強会の実施、街頭の募金活動。学園祭にはPR犬を招いて講演会を開いている。


周りの仲間と共に考えてきたからこそ

ある年、視覚障がいをもつ学生が「とるて」に加わった。ホワイトボードを使ったミーティングや学外施設への移動が難しいなど、視覚障がい者の視点に立って考えていなかったことに気づき、それからは盲導犬だけでなく、視覚障がい者についても勉強会を増やしていった藤井さん。今では、バスの車内で出会った視覚障がい者の方に自分から声をかけられるようになった。「以前は助けたいと思っていても、声をかけられませんでした。『とるて』で“(視覚障がい者に対して)何ができるんだろう?”とみんなで考えたからこそ、成長できたし、行動できたと思います」

そんな彼女も成果が明確に見えない活動に、モチベーションが維持できず団体をなくしてしまおうかと考えた時期があったという。それでも活動を続けられたのは盲導犬に関わる問題意識と仲間の存在があったから。育成費用の9割が募金で成り立っている盲導犬。だからこそ、“なんとかしたい”という強い思いが根底にあった。そして、自分が企画したプロジェクトを「一緒にやりましょう」と仲間が賛同し、実現できなかった企画を引き継ぎ取り組んでくれている後輩たちの姿が彼女の喜びとなり、心の支えとなった。自分一人ではなく、みんなで取り組む大切さを学んだ藤井さん。「大学生だからこそ盲導犬に対してできることがなんでもあると思っています。関西盲導犬協会のみなさんからの協力など周りの支援なしでは活動は成り立ちませんが、盲導犬を知ってもらうために色んな方法でアプローチしていきたいです」

PROFILE

藤井友理さん

野田学園高等学校(山口県)卒業。2013年9月~2015年8月、盲導犬支援サークル「とるて」代表に就任(*1)。2015年8月~2015年12月まで立命館大学ワシントン大学「環境と人間」プログラムに参加。帰国後、盲導犬ほじょ犬ステッカープロジェクトを大学に提案し、ステッカー貼付の活動に取組む。*1留学期間除く

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