遠く離れたマレーシアの地から日本に憧れを抱いていた一人の少女が、数年後、日本で実施された論文コンテストで2年連続上位入賞という快挙を成し遂げた。

自身で未来を切り拓く

幼少期、マレーシアの首相が日本文化の魅力について話していたのを聞き、日本に興味を持ったというアミナさん。その後、大学の交流制度を利用し日本を訪れ、日本で学びたいと実感。さまざまな大学に自らコンタクトをとり、日本への留学について調べていた。そのときに出会ったのが、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科の湊宣明教授。マーケティング、システムダイナミクスや宇宙について研究している湊教授に興味をもったアミナさんは、湊教授の論文を読破。教授とアミナさんの研究は少し異なるが、直接メールで留学について相談したという。「先生は『心配しなくても大丈夫。サポートしますので、ぜひ立命館に来て勉強してください』と言ってくれました。その言葉が本当に心強かったです」と立命館への留学を決意した。

来日当初は日本語があまり得意ではなく、「市役所で必要書類を記入するときが、一番大変でした」と、不安と期待が入り交じっていた当時を振り返る。その後、週1回茨木市役所で開催されている日本語教室に参加。2年勉強した今、簡単な日本語を理解し話すこともできるようになり、自宅の住所を漢字で書けるようになった。日本語教室でお世話になっている先生のことは、“日本の母”と慕うほど信頼しているという。普段は、一人暮らしをしている自宅より、大阪いばらきキャンパスにある研究部屋で過ごすことが多く、「自分の専門分野の本もたくさんある図書館も利用でき、居心地がいいです。本棚もお気に入りです」と、今は日本での生活を満喫している。

新しい知識を学び、広がる研究

2016年、来日して7カ月で挑戦した「FALIA主催外国人留学生向け懸賞論文コンテスト」で見事3位を獲得。しかしこの結果に甘んずる事なく「もっと上を目指したい」と2017年度も挑戦。前年を上回る2位を受賞した。「母国のマレーシアに帰国しているときに受賞の結果を聞きました。母も喜んでくれて、とても嬉しかったです」と笑顔を見せた。

今回の論文の共通テーマは「生命保険」。アミナさんは、22カ国のアジア諸国において、国民の経済力の観点から生命保険の必要性の有無についてデータ分析を用いて明らかにした。分析に必要なデータを収集、また整理することが一番大変だったというが、そのデータは、他の参加者の論文にはなく、精密さが受賞のポイントになったと感じている。論文執筆にあたり、生命保険についての新たな知識が増えたと同時に、健康経済学や健康制度の管理について研究している自身の研究にも当てはまる部分があり、研究の幅が広がったと話す。今後は、今回の経験を生かし、友人や後輩の論文作成のサポートもしていきたいと決意を新たにしたアミナさんの表情は、希望に満ち溢れていた。

PROFILE

ファティン・アミナさん

マレーシア出身。National University of Malaysia卒業、University Putra Malaysia大学院卒業。料理をつくるのが好きで、3食の自炊は欠かさない。天ぷらや納豆、すしなどの日本食を好む。趣味は読書。夢は健康経済学・システムダイナミクスの研究者になること。

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