「トウキョウ建築コレクション」のデザイン展で、グランプリ受賞
「設計にはいろいろな制約がありますが、それをクリアして、自分にしかできない作品ができた瞬間が好きです」と語ってくれたのは、学生団体「Clown※」に所属し、設計部の部長を務める中村さん。2018年2月27日から開催された「トウキョウ建築コレクション2018」のデザイン展で、中村さんが設計した「イバショテラス」がグランプリを受賞。代官山のヒルサイドテラスで、制作した4つの家具を展示した。
※自然の木に大人も子供も楽しめる家、ツリーハウスを作り、地域活性化を目指す建築学科の学生によって結成された学生団体
日々の学びから深まった建築への関心
絵を書いたり、作品を作ることが好きだった中村さんは、建築を学ぶ道を選んだ。建築都市デザイン学科に入学し、最初はよくわからないまま、学科の学生の多くが所属する、「Clown」に入ったという。1回生の夏ごろから、少しずつ設計に興味を持ち始め、のめりこんでいった。「パズルをあてはめていくようなもので、出来上がったものが人の動きなどに変化を起こせることに、ひかれたのかもしれません」と話す。
これまでの技術を生かし、安全な家具を
トウキョウ建築コレクションの主催者から連絡があり、「Clown」の活動をもっと全国に広めたいと、インテリアとアクティビティのデザインを行うデザイン展への参加を決めた。「Clown」からは2案を応募。そして、選考の結果、1月に中村さんの設計した「イバショテラス」がヒルサイドテラスの展示に選ばれ、制作に向けて主催者と設計をブラッシュアップしていった。中村さんは、敷居が高いといわれている代官山で、人々が気軽に立ち寄り、今まで起こらなかったようなアクティビティを生み出すきっかけとなる4つの家具を提案。普段はあまり触れることができない自然を感じてもらえるような家具、寝そべったり、ボードゲームができるような家具、周りを遮断して、瞑想ができるようなスペースがある家具、を設計した。2月に行われた「Clown」の合宿中に制作し、メンバー約70人で7日間をかけて作り上げた。制作では、数ミリずれただけでも家具の片足が浮いてしまうこともあるため、妥協せずに正確さにこだわった。中村さんは、人をまとめていく難しさを感じつつも、みんなのモチベーションを維持できるよう、周りへの気配りを大切にしていたという。
ヒルサイドテラスに展示した家具で子供たちが遊ぶ姿をみて、子供たちに刺激を与えることができたのではないかと手ごたえを感じた中村さん。「設計の上で一番重視したことは、安全性。展示中に東京では春一番が吹きましたが、壊れることもなく、安心しました。ツリーハウスの制作で培った技術が生かせたと思います」。
今回の出展を通し、実際に人がどう動くか、自分が想像していたものとは違い、設計する上で大きな学びにつながったと話す。まだ建築を学び始めて2年。「目の前の課題や小さな目標をコツコツこなすことが、今は大事だと思っています。そして、建築士としてもっと大きなプロジェクトを自分が中心となって進めていくということが将来的な目標です」と語った。
PROFILE
中村 魁さん
大阪府立大手前高等学校(大阪府)卒業。中学、高校時代は陸上部に所属し、走り幅跳びに注力。建築都市デザイン学科の学生サークル「Design Factory」にも所属。休日にも大学で課題をこなし、建築の勉強に励んでいる。