テコンドーは、2000年に初めてオリンピックの正式競技として実施され、2020年の東京オリンピックでも行われる。激しい蹴り技で戦いポイントを獲得し、蹴る場所や回転技などでそのポイントが変わる競技だ。

大谷さんは選考会で2位、体力測定で1位になったことで、今年3月に全日本テコンドー協会の"強化指定選手"に選出され、7月末に行われるワールドカップの団体戦では、日本代表チームの一員として出場する。「世界のトップクラスの選手と戦うので、厳しい戦いになると思います。せっかくチャンスをいただいたので、平常心を保ちながらも、何としてでも勝つという気持ちで試合に挑みたいです」と意気込みを語る。

合宿を機に世界レベルを意識

テコンドーの多彩な蹴りに魅了され、幼い頃から姉弟でテコンドーをしていたが、お姉さんは「全日本選手権大会」で5年連続メダル獲得経験がある一方、大谷さんは全国大会で一度も優勝経験がない。順調に結果を残すお姉さんと自身を比較して落ち込むこともあったそうだが、「とにかく練習するしかない」と自分に言い聞かせ、練習に打ち込んだという。大学1回生で初めて出場した「全日本学生選手権大会」では、日本代表の選手と対戦し、その力の差に愕然としたという。「想像以上に何も出来ない自分だったので、このままでは一生勝てないと思いました」と当時のことを振り返る。

しかし、その敗戦から意識が変わり、基本のトレーニングに加え、体の軸がぶれないように体幹トレーニングを取り入れ、自費で電子防具を購入するなど練習内容を工夫したり、強い選手の映像を研究した。また、道場で小・中学生を教える機会の多い大谷さんは、後輩たちへのアドバイスが、自分の新たな気付きにもなったという。その結果、良い流れで試合が出来るようになり、少しずつではあるが実力のある選手に勝てるようになった。今年3月の合宿で韓国代表の選手と対戦するなどし、「自分のなかの強い選手の基準が、必然的に日本から世界に変わりました」と自身の変化を語る。

あきらめない、2年後への思い

3歳から中学1年生までは空手もしていたが、「オリンピックに出たい」という思いからテコンドーだけに絞ったそう。2年後に開催される東京オリンピックは、大谷さんの夢を叶えるチャンスとなる。「予選はこれから熾烈な争いになると思います。それでも自分に可能性を感じている限り、本気になって目指したいです」彼の熱い眼差しは、2年後を見据えている。

PROFILE

大谷 颯さん

兵庫県立国際高等学校(兵庫県)卒業。尼崎テコンドークラブAMAに所属。小学3年生の時、友人に道場に誘われテコンドーと出会う。趣味はスポーツ観戦で、尼崎競艇場が近くにあったので幼い頃からボートレースを観るのが好き。三浦一郎教授のゼミに所属し、マーケティングについて学んでいる。

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