障害について学びたい

今年3月、障害学生支援室の障害学生やサポートスタッフの学生たち約11名が、普段のサポートだけでは解決できない授業内の問題を解決するため、教員向けのFD(授業改善)冊子「大学と障害学生 ~学生たちが考え、書き綴った、障害学生をめぐる大学のいま~」を制作した。
中村さんも制作に関わった学生の一人。

1回生のとき、教員を目指すなかで障害のある生徒との関わり方や、よりよい授業環境について学びたいという思いから、障害学生支援室の扉を叩いた。聴覚障害学生 へのパソコンテイクのサポートでは、初めはブラインドタッチもできなかったが、帰宅後は毎日タイピングを練習しスピードを高めていったり、読話できるように口を大きく開いたりジェスチャーをする先輩の姿から学んだりと、努力を続けてきた。障害学生への接し方にも当初は戸惑ったというが、サポートを続けるうちに自分が担当する障害学生のことをもっと知りたいと思うようになり、進んで話しかけられるようになっていったという。

より良い学びの環境を求めて

冊子の中で中村さんが担当したパートでは、教員には理想の授業や障害学生への配慮について、障害のない学生(以下:学生)には今まで受けてきてよかったと思う授業について、障害学生には実際に授業で困ったことなどについて取材を行った。「冊子をつくるためだけでなく、その学生にも取材をきっかけに、“もし自分が障害学生だったら”という視点で授業環境やサポートについて考えてもらいたいと思い、どのような質問をするべきか試行錯誤しました」

取材の結果、教員・学生からは「どんな配慮が必要か聞きたい」、障害学生からは「教員や周りの学生から聞いてほしい」といったすれ違いが見えた。中村さんらは、このすれ違いはコミュニケーション不足から起因するものだと考えたという。そして要求のある側が相手に伝えること、顔を合わせた話し合いの重要性を強調した上で、障害学生が「安心して授業を受けられる環境」を可能にする、互いの気配りやコミュニケーションは、障害学生だけでなく、すべての学生に対してもよりよい授業環境づくりにつながると結論付けた。

些細なことでも気づいて行動する

「これまでは、障害学生の主体性を尊重してサポートスタッフの自分が口出しするのはよくない、と思っていましたが、疑問、改善点をみつけたら自分自身も発信することが環境を変えるいちばんのきっかけになると感じています。」そして、中村さんはこう続けた。「教室内の通路の荷物を机の内側に入れるとか、パソコンテイクの姿が見えたら話し声を小さくするとか、些細なことでいいんです。“こうしたらどうかな?”と思うだけではなく実践してほしい。積極的に私たち学生が障害学生に気を配る姿をみたら、先生も理解し対応してくれるのではないかと思います」

サポートスタッフの活動を通じ、相手の立場で物事を考え行動できるようになった中村さん。多感な時期の生徒たちと心を通わせ、生徒たちが変っていくきっかけをつくれるような 教師になりたい、とはにかみながら将来の目標を語ってくれた。

PROFILE

中村夏子さん

山梨学院高等学校(山梨県)卒業。2013年~障害学習支援室のサポートスタッフに加入。学内では留学生支援団体TISAに所属し、交流イベントの企画・運営に従事。また学外では非行少年の学習支援活動にも携わる。

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