「『人の役にたつものをつくりたい』その思いが研究を続けるモチベーションにつながっています」と話すアンドンさんは、山本寛准教授と、飛行ロボットのドローンと発信器のビーコンを使った遭難者救援システムの開発に取り組んでいる。

ドローンで登山者が持つビーコンの電波を受信して、その電波強度で正確な位置を割り出し、救助隊に位置を知らせる。登山などで発生する遭難者の救援を想定し、短時間で、広範囲の捜索が可能となるシステムだ。このシステムは操作用のスマートフォンで大まかな探索範囲を指定し、ドローンに搭載された小型PCがドローンを操作する。そのため、人がドローンを操作して飛行する範囲よりも広く飛行し、探索することができる。雪に反射しやすい電波や雪の中でも届く電波など、それぞれの特性を生かした周波数の異なる2種類の電波で遭難者の位置を特定し、周波数の電波の受信状況から、雪や土砂などに埋まっていないかなどの状況を判別することができるのが特徴だ。

今までにない新しい研究を

大学入学後、パソコンの中でパズルのように組み立てていくプログラミングの面白さに魅了されたアンドンさん。3回生の頃に、新しいことを研究したいと当時話題となっていたドローンに着目し、研究を始めたという。大学院に進学した頃、ドローンの事件が続き、悪いイメージが目立つようになっていたことや災害が続いていたことから、「ドローンは本当ならばもっといろんなことに役立てることができるのに」と、現在の救援システムの開発に乗り出した。

試行錯誤の毎日

ドローンの研究は、比較的新しく参考となる論文などがあまりないため、手探りで研究を進めてきた。時には、ヘリコプターの捜索に関する報告書を参考にすることもあったという。どういう機能が必要なのか、問題を解決するためにどうすればいいのか、ひたすら考えて、アイデアが浮かぶと研究室で報告し、みんなの意見を聞いたり、山本准教授にアドバイスをもらいながら試行錯誤を重ねてきた。ドローンを使った実証実験を繰り返しながらプログラムの修正を行うため、研究の進捗は、天候にも左右されるという。「大変ですが、思ったとおりにドローンが動くと嬉しいし、楽しく研究が続けられています」と笑顔を見せる。

「遭難者を捜索するためのものなので、精度が高くないと使えない。実際に山で捜索するためには、もっとシステムを凝ったものにしていかなければ」と話す。山だけでなく携帯が使えなくなった災害時なども活用できるよう、システムの応用も考えていきたいという。今後も、実証実験を続けながらシステム完成への模索は続いていく。

PROFILE

アンドン聖司さん

草津東高等学校(滋賀県)卒業。情報ネットワーキング研究室所属。 中学、高校時代はソフトテニスに打ち込む。今は筋トレのため、週に3回ジムに通う。趣味は中学から始めたギター。電子情報通信学会通信ソサイエティの、2017年インターネットアーキテクチャ研究会にて学生研究奨励賞、2018年総合大会インターネットアーキテクチャ若手ポスターセッションのプレゼンテーション賞を受賞。卒業後は、Web関係の開発職として働く予定。

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