「チームいずみ研」の挑戦

2018年9月、電子情報通信学会が主催する「第8回相磯秀夫杯FPGAデザインコンテスト」にて泉知論教授の研究室の「チームいずみ研」が優勝を果たした。コンテストは、ミニチュアの道路上にFPGA※により制御された自動車を走らせ、指示通りの道順で道路をはみ出さずに走行し、信号や障害物、人(人形)の認識といった課題をクリアしていくものだ。開発期間が6カ月という短い期間だったこともあり、どのチームも障害物や人の認識までにはいたらなかった。そんな中、「チームいずみ研」のみが「田」の形をした道路の走行をクリアし1460点を獲得。2位のチームに約500点差をつけ、優勝した。

※FPGA( Field Programmable Gate Array)は、デバイス内の電子制御機能の大部分を変更できる半導体 ICで、ドローンや自動運転システム、自律ロボに使われるようになり、近年注目を集めている

チームを率いるのは、FPGAを用いた画像システムのプラットフォーム化に関する研究に取り組む工藤さんだ。自動運転システムの構築には画像処理が必須となるため、これまでの成果を生かしたい、とコンテストにチャレンジすることを決めたという。チームメンバーは、工藤さんと同期の院生1人、学部生2人と泉教授の5人。システム開発は学生が担当した。リーダーとして、メンバーの技術力にあわせて分担を決め、それぞれの進捗をみてサポートを欠かさなかった工藤さん。「チームでの開発作業は、互いの理解を補い新たな発想が生まれるなど、今までにないことで面白かったです」と話す。

一から開発することのこだわり

他のチームは、既製品のロボットキットの部品やライブラリ等を流用していたが、「FPGAは、チップに回路を設計する上で、自由に回路を書き換えることができるなど柔軟なデバイスです。設計する上で、拡張性を考え、車体構成からFPGAを用いた画像認識、自動運転までの全てを一から開発することにこだわりました」と話す。工藤さんはこれまで自動運転システムなど大きなシステムの開発設計の経験がなかったという。「限られた時間の中で、必要な機能の検討や、アルゴリズムの調査、考案することはとても難しかったです」と開発までの苦労を語る。

これからも続く開発の道

苦労はあったものの、6カ月の開発期間を振り返り、「結果を受け、やってきてよかった、と思います。まだこれから大変ですが、開発は面白く、嫌になることはありません」と笑顔をみせる。工藤さんたちは、12月に国際会議で開催されるコンテスト、「FPT2018 FPGA Design Competition」に出場予定で、優勝を目指し、更なる改良を続けている。個人の研究では自動運転システム開発での学びを生かし、モーター制御などを組み込んだFPGAを用いた自律移動ロボットのプラットフォームの構築を目指している。

PROFILE

工藤裕也さん

関西大倉高等学校(大阪府)卒業。中学、高校時代はテニスに打ち込む。休日は、プログラミングをしたり、技術書を読む。趣味は旅行先での撮影。開発に行き詰ったときは、銭湯や温泉で疲れをとる。修了後は、ロボットの制御や自動運転システム開発関係の仕事に就くことを目指している。

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