今年9月、タイ東北部の貧困地域に渡航し、中高生に将来の夢や目標を持ってもらうために、現地の学校でワークショップを行った規矩さん。「夢について掘り下げて考えた時間は、生徒たちにとってかけがえのないものでした。これから毎日でも教えにきてほしいです」と校長先生から賞賛され、嬉しかったと笑みを浮かべた。

ワークショップ実現にむけた苦悩の日々

高校時代、東南アジアの地域活性化と貧困改善に向けた調査を目的とするプロジェクトでタイに行く機会があり、奨学金制度を利用し教育を受けている子供たちと出会った。そして彼らが経済的な事情により、将来自分が就く職業を自分で選ぶことなく決めていることを知った。“貧困だから職業の選択肢が少ないというわけではない”ということを伝えたいと思い、現地の生徒たちの意識改善をはたらきかけようと決意。1回生で自主活動団体「タイへ、地元京都から。」を立ち上げた。 立ち上げからタイへ渡航するまでの道のりは長く、自分たちに何ができるのかを団体内で話し合う日々が続いた。現地の学校でワークショップをするには、知識と資金が必要だと考えた規矩さん。知識面は、現地を知るための勉強会を何度も行ったり、イベントで出会ったタイの観光雑誌の担当者と連絡をとり、タイに関する情報提供の協力を求めた。資金面では、スポンサーになっていただける財団・国際協力機関・企業にプレゼンするため、TEDの講演会やカンファレンスで名刺交換をするなど、あらゆる機会を逃すまいと足を運ぶことを繰り返した。その結果、渡航までに2年以上の時間を費やしたが、団体で目標としていたタイの学校でのワークショップを実現することができた。

“自分”を考えるきっかけづくりになりたい

ワークショップでは、1日目は、自己分析のためにタイの生徒たちがマインドマップを書き、それを基に自分のことを大勢の前で話す場を設けた。2日目は、職業の選択肢を知ることを目的としたかるたを行った。このかるたには、職業に関係する絵と、その職業についてのタイでの情報が書かれており、「タイへ、地元京都から。」のメンバーが全て手作りで用意した。かるたの後は、自分の目標を明確にするための「自分ツリー」を作成し、最終的には参加生徒がなりたい職業を見つけるとういう構成にした。開催後は、参加した生徒の大半がやりたい仕事を見つけることができ、団体としても手ごたえを感じられる結果となった。

「自分たちは、あくまでもタイの生徒たちの強みや好きなことを引き出すサポートの役割をしたいと思っています。同じ若者だからこそ心情部分に寄り添って考えられると思うし、私たちの活動がほんのひとときでも“自分”というものについて考えられるきっかけになれればと思います」と思いを語る規矩さん。今後もタイの学校との繋がりを途絶えさせないためにタイでのワークッショップ開催を続けるだけでなく、日本の若者にも気づきを得てもらうため自身の出身高校に体験談を話しにいくなどの取り組みを続ける予定だ。

PROFILE

規矩琴香さん

立命館宇治高等学校(京都府)出身。臼井豊教授のゼミに所属。地域(京都)に密着し、環境権の中の景観利益を民法上の保護対象とすることについて研究中。休日は、町家旅館を経営する会社で長期インターンに通う。趣味は京都観光。

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