立命館大学が全日本学生居合道大会3連覇、そして立命館史上女性初の優勝に輝く。
「優勝が決まった瞬間、とりあえずほっとしました。先生や先輩方にたくさんの稽古をつけてもらっていたので、その期待にこたえることができました」と喜びを語ってくれたのは、居合道同好会に所属する陸井さん。居合道同好会が創立され、25年。「第33回全日本学生居合道大会」(以下:全日本)個人戦の部において、立命館は3連覇を成し遂げ、女性初の優勝に輝いた。日々鍛錬を積み、プレッシャーをはねのけ、掴み取った優勝だ。居合道の試合は、男女混合で行われ、仮想敵に対し、制限時間内に古流(各流派)の2本、指定の3本の計5本の技を決め、その正確さや礼儀、修行の深さなどを審判が判定し、勝敗が決する。
新たな競技への挑戦
高校時代、フェンシングでインターハイ出場も果たしていたが、大学では新しい競技にチャレンジしようと決めていた。入学した当時、新歓ブースにて袴姿で帯刀している先輩の姿をみて、興味を持ったという。そして体験会で刀を振り、独特の動きが面白い、と入部を決めた。競技はこれまで経験した競技とは体の動かし方が異なり、とても大変だったという。体が動かせるようになっても、刀の扱い方や仮想敵のおき方、技への理解など、さまざまな課題に向き合ってきた。特に「丹田※を意識して」とずっと言われてきたが、概念的なことで理解するのが難しかった。武道経験者にはすぐにわかることだったが、陸井さんは理解するのに時間がかかり、ようやく意識できるようになったのは、今回優勝を果たした全日本でのことだった。
※臍の下の辺りで、気が集まる場所といわれている
プレッシャーとの闘い
1回生、2回生と好成績をおさめていたが、3回生で副将となった頃からスランプに陥り、稽古を増やしても納得のいく成績を出せなくなってしまった。副将という立場や好成績を収めていた1年上の代と比べてしまい、「勝たなくてはいけない」とプレッシャーを感じていたという。結果が出ず、つらくても一生懸命練習に打ち込むしかなかったと当時を振り返る。そんな陸井さんがスランプから抜け出すきっかけとなったのは、4回生の7月「西日本居合道演武大会」団体戦で前年に2-1で負けた相手に3-0で負けたことだった。「完膚なきまでに負けたな」という周囲の言葉に「全てを見直さなければいけない」、そう吹っ切れたのだという。
それまで、刀をどこで止める、どこをどう切る、といった見栄えや形にこだわっていた が、仮想敵を切るためにどういう動きをすればよいか、という敵に対する動作を見直した。そして臨んだ10月の「第29回西日本学生居合道選手権」選手権の部で3位となり、初めての全日本、個人戦の部への出場権を獲得した。「3位という実績を残すことができ、ホッとしました。でも、準決勝でいつも負けてしまう選手に負け、もう1度しっかり見直さないと全日本では勝てないとすぐに気持ちを切り替えました」と語る。全日本までの約1カ月、試合の動画を見て、技の間隔や顔の向き、刀の傾きなど、細かい点を徹底的に修正したという。いよいよ迎えた全日本の決勝戦。これまであまり決勝戦に出場経験がなかったためか、逆に緊張しすぎず、落ち着いていたという。陸井さんの古流の技は、得意な「小手切り」と華やかに見えて好きだという「抜き留め」。その結果、2-1で優勝を勝ち取った。
「居合道はとても奥が深いです。同じ技でも教本の解釈の仕方や師範からの言葉の受け止め方で、個性がでます。それが居合道の魅力であり、面白さです」と凛とした表情を見せ、「卒業後も自分らしい居合道を続けていきたいです」と、語った。礼儀作法や幅広い年代の人との関わりなど、居合道を通して得た学びや経験は、陸井さんを大きく成長させた。
PROFILE
陸井美輝さん
星陵高等学校(兵庫県)卒業。小さい頃は、趣味でアイスホッケー。高校時代は、フェンシングに打ち込み、インターハイや全日本選手権、国体などに出場。萩原啓教授の生体情報研究室に所属し、ドローイン呼吸によるウエストサイズダウン効果の検証に取り組む。休日には、散策やサイクリングをして、リフレッシュしている。
2018年度 主な大会成績
4月 第56回全国居合道高知大会 女子二段の部 3位
7月 第35回西日本学生居合道演武大会 2,3,4回生の部 優秀演武賞
9月 第47回香川居合道大会 女子二段の部 3位
10月 第29回西日本学生居合道選手権大会 選手権の部 3位
12月 第33回全日本学生居合道大会 個人戦の部 優勝
1月 第60回大阪居合道大会 女子二段の部 優勝