2018年11月に開催された「全日本学生馬術競技大会」にて、体育会馬術部(以下:馬術部)は3種目総合の団体成績で、創部以来初となる3位の成績を収めた。2018年は馬術部創部100周年にあたる特別な年であり、特別な思いで臨んだという当時主将の岡林さんと現主将の薬師さん。「創部100周年という節目の年に、絶対に結果を残したい」と2人は強い決意を持って臨んだ。

馬術競技は、演技の正確さや美しさを競う「馬場馬術」、コース上に設置された障害物を飛越しながらミスなく早く走行する「障害馬術」、これら2種目にクロスカントリーを加えた3種目を同じ人馬で戦い抜く「総合馬術」がある。3種目総合は、これら3つの競技に出場したチームでの総合成績で決まる。これまで、「馬場馬術」と「障害馬術」の個人・団体では上位成績を収めていたが、昨年は「総合馬術」に出場できておらず、3種目総合で成績を残すことができなかった。というのも、総合馬術は3種目を同じ人馬で戦い抜くため、オールマイティな能力を持つ馬、そしてそれを乗りこなす騎手が必要となり、出場へのハードルが高かった。

岡林さんは、高校生から馬術を、薬師さんは小学生からはじめた。岡林さんに馬術の魅力を聞くと、「人馬一体になり、良い成績を残せたとき、ほかのスポーツでは味わえない喜びがある」と語る。薬師さんは小学生のときに馬術クラブで乗馬に出会い、気づいたら乗馬に夢中になり、今に至る。乗馬の魅力を聞くと、「馬が可愛い。とにかく可愛い」と語り、馬への愛情がひしひしと伝わってきた。

100周年の2018年、総合馬術に適した馬、龍瓔号が仲間入りし、岡林さんがその騎手に選ばれた。しかし、実際に乗ってみるとうまくいかない。そもそも、馬は非常に繊細な生き物で、その日のコンディションで大きくパフォーマンスが異なる。また、騎手のコンディションも大きく影響する。一歩ずつ、馬の状態を見極めながら、練習に励んだ。

大会当日、総合馬術で出場した岡林さん・龍瓔号は、「馬場馬術」、「クロスカントリー」ではうまくいったものの、「障害馬術」で人馬の呼吸が合わずミスがあり、大きく減点された結果、全体の21位となってしまった。それでも、「結果は決して満足できるものではなかったけれど、総合馬術に出場でき、3種目総合の切符を手に入れられてよかった」と岡林さんは振り返った。薬師さんは得意の「馬場馬術」に出場。まずは決勝進出を目標にしていたが、予選全体の2位という好成績で決勝に進出。しかし、決勝では緊張してしまい体が力み龍航の能力を最大限に生かすことができず、結果は僅差の2位。「ミスがなければ、勝てた試合でした」と語る薬師さんは当時を振り返り、悔しさを滲ませた。表彰式後は、応援してくださった方々に申し訳なさと悔しさで涙が止まらなかったという。それでも、3種目総合成績で3位という創部初となる輝かしい成績を残すことができ、家族や監督、何よりもOB・OGからも大いに祝福され、嬉しかったという。「初めてのことを成し遂げられたことは本当に価値があると思っています」と語る岡林さんの顔からは達成感が伝わってきた。

今後、岡林さんは卒業して社会人になり、主将は薬師さんが務める。卒業する岡林さんだが、「社会人になっても試合には顔を出したり、今までとは違った形でサポートしたりしていきたい」といい、頼もしい先輩が今後も馬術部を見守る。主将のバトンを引き継いだ薬師さんは、「まずは、みんなが競技の集中できる環境を整えたい。そして、次の『全日本学生馬術競技大会』では、個人・団体で優勝したい」と抱負を語った。人馬一体、さらなる高みを目指す馬術部から目が離せない。

PROFILE

岡林蘭丸さん

幡多農業高等学校(高知県)卒業。趣味はラーメン巡りの他、ゴルフや野球、ボウリングなど。今後の目標は、ダービー馬を育てること。

薬師ういさん

農芸高等学校(東京都)卒業。 音楽鑑賞や散歩をしてリフレッシュする。「全日本学生馬術競技大会」での優勝と主将としてふさわしい人材になることを目標としている。

最近の記事