全日本学生落語選手権で落語研究会初の学生日本一に輝く
2019年2月に行われた「第16回全日本学生落語選手権 策伝大賞」(以下、策伝大賞)において、最優秀賞である「策伝大賞」に輝いた立命亭写楽斎こと、髙橋壱歩さん。落語研究会創部以来、初の快挙を成し遂げた。学生落語に打ち込む学生にとって、学生日本一をかけて競う2大大会のうちのひとつである「策伝大賞」。今年は、ビデオ審査を経て、全国から228人が予選会に出場し、予選会を勝ち抜いた8人が、1,400人の観客を前に落語を披露した。
漫才と落語、双方を生かして技術を磨く
小さい頃からお笑いが好きで、大学ではお笑いサークルに入ろうと考えていた高橋さんが大学で出会ったのが、落語研究会だった。立命館では、唯一お笑いができるサークルで、漫才もできると知り、落語研究会へ。「初めて先輩の落語を見たときは、時間も長く、漫才より難しそう」と感じたという。落語を練習する傍ら、メンバーとコンビを組み、自身がやりたかった漫才にも注力した。
落語で培った演技力や、落語の多様な演目を知ることは、漫才をする上で話の展開を考えるのに役立つという。一方、小さい頃から漫才のネタを作っていたことで、落語での言葉選びやボケの入れ方などに抵抗なく取り組むことができ、落語と漫才で得た学びを双方に生かしている。彼の落語の特徴は、迫力や臨場感だ。そのため、発声や呼吸に気をつけているという。「リズムが崩れないよう、どこで息継ぎをするのか、言い回しや緩急のつけ方など、細かな技術を見つけることが楽しいです」と語った。
大舞台で見せた自分らしさ
「策伝大賞」の準備を本格的に始めたのは、予選会の3日前。以前、学内寄席で「まんじゅうこわい」を披露したことがあったが、台本はうろ覚え。アレンジを加えたのは、直前だった。「追い込まれたときにこそアイデアが出てくるんです」と話し、自分自身を追い込み、6分間の噺を練り上げた。こだわったのは、いくつものボケを網羅すること。時事ネタや古典風のボケ、動きのボケなどを取り入れ、笑いが途切れないように意識した。決勝を前に、知人からは「自分らしさをだしていけばいい」そんな言葉をかけられた。「応援してくれているみんなも、勝つことにこだわるより、自分らしくやってほしいと思ってくれているんだ、と思いました」と話す。 予選の前日や、当日は、逃げ出したいほどの緊張と不安に襲われたが、決勝の日は、不思議なほどに緊張はなかった。決勝は、予選会よりも大きなホールで観客は約1,400人。観客の笑い声も音ではなく、振動のように感じられたという。しかし、そうした雰囲気にのまれることなく、自分らしく楽しめたという。
「受賞が決まった瞬間、部員が喜んでいる姿を見て、大賞をとったんだ、と実感がわきました。結果がでない時期も長かったけれど、落語を続けてきてよかったです」と笑顔をみせた。次に彼が目指すのは、夏に開催される「てんしき杯学生落語王者決定戦」での優勝だ。春、夏の2冠を目指し、さらにその話芸に磨きをかけていく。
PROFILE
髙橋壱歩さん
初芝立命館高等学校(大阪府)卒業。 1回生の夏から落語研究会のメンバーでもある藤田真作さんとコンビを組み、「シンプルテンプル」として活動。ネタづくりをするときは、散歩をしてアイデアを練る。趣味は温泉や銭湯巡り。