「たくさんの人に感動が伝わる、そんな作品をつくりたかった」そう話す村井ミチルさんは、2019年2月、テレビCMなどの映像制作を手がける株式会社ティー・ワイ・オー主催の「TYO学生ムービーアワード」で、見事に審査員特別賞を掴んだ。共通テーマは「“走る”から発想した60秒のショートフィルム」。実写映像やアニメーションなどさまざまなジャンルから603作品が集まった。彼女が監督をつとめた受賞作『希望に夢を走らせて』は、挑戦を続ける村井さんが描いた、夢をあきらめない思いが心に響く作品だ。

“夢をあきらめない”大切さ

『希望に夢を走らせて』は、女の子が街中を駆けまわり、軽やかに宙返りするパルクールから始まる。この躍動感に思いを馳せるように、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い、車椅子にのったもう一人の女の子が新薬に希望を持って治療に励む物語。分かりやすい切り口から始まる映像は、パルクールと女の子の想いが連鎖し、60秒の間にどんどんと深みを増していく。 将来、映像制作を仕事にするために幅広く自主活動をしていた村井さん。今回のアワードに応募したきっかけは、学内で手に取った一枚のチラシ。特別審査員に書かれた有名アニメ監督“細田 守”の文字を見つけ、「憧れの人に自分の作品をみてもらえるチャンス」と胸を躍らせた。作品制作ではたとえ短い映像であっても「分かりやすい内容で深い感動を伝え、みる人が“面白い”と思うモノをつくる」と心がけ、ALSの女の子が抱く、夢をあきらめない強い意志が伝わる動画が完成した。受賞式では、細田 守監督のメッセージ動画で「僕の好きな作品は…」と自分の作品名が口に出されたときは、飛び上がるほど嬉しかったという。

映像でつながる人の輪を

「大学での一番の成長は、友達ができるようになったこと」と笑顔をみせる。小さい頃からジブリ映画などのアニメーションが好きで、映像の世界に興味を持っていたが、大学までは人と接するのが苦手で、内気な性格であったという。入学当初は実写映像に興味はなかったが、大学で出会った仲間と実写映像の制作に取り組んでみると、そこには想像以上の魅力があった。日々熱中していくうちに、気がつけば周りには友達や先輩、学校外にもたくさんの仲間ができていた。今回のアワードでも、声をかければ力を貸してくれる仲間がいたことが何より嬉しかったという。「いつの間にかこの人脈が私の強みになっていました。私にとって映像制作は、人との“つながり”そのものです」映像制作を通して、人と関わることで大きく成長できたと話してくれた。


挑戦を続け、新たなコンテンツを生み出す

映像は、一生懸命つくってもその苦労を知っているのはスタッフだけで、作品を学校外に発信してたくさんの人に評価されることで、それまでの努力が実を結ぶのだという。「だからこそ、これからも挑戦し続けていきたいし、みんなの心に響く映像をつくりたい」と話す。今後の目標は、アニメーションと実写を組み合わせ、両方の魅力を惹きだした映像をつくること。どちらの良さも知っているからこそできる、彼女らしい目標だ。現在は授賞式で知り合った新たな仲間と、大好きなアニメーションを制作中。「アニメをつくるのは初めてだから、とても楽しみ」と嬉しそうに目を細める村井さんは、これからも日々成長し、フリーランスの映像監督を目指す。

PROFILE

村井ミチルさん

立命館宇治高校(京都府)卒業。物心がついた頃からジブリ映画やアニメーション鑑賞が日常に。趣味は音楽を聴くこと。学部での活動以外でも積極的に自主活動を行い、休みの日には映像の撮影や編集に励む。


TYO学生ムービーアワード審査員特別賞・受賞作品『希望に夢を走らせて』は、村井ミチルさんのYouTubeページにて掲載。
https://www.youtube.com/watch?v=vGdTrlUgQS0

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