「第49回関西女子学生剣道選手権大会」個人戦で、立命館大学では45年ぶりの優勝に輝いた對馬さん。初出場で205人の出場者の中から掴んだ頂点だった。昨年は、大会の運営補助で試合も見られなかった悔しさをも乗り越え、部内の出場枠6人に選出されたときには、「ようやく自分の力を試せる時がきた、とワクワクしました」と、振り返る。そして、初優勝を果たし、「優勝できたことに本当に驚きました。部員のみんなや両親が喜んでくれたことがとても嬉しかったです」と笑顔を見せた。

模索し続ける日々

立命館大学では、毎試合オーダーを変更するため、ポジションに合わせた剣道ではなく、自分の剣道、戦い方が求められる。大学入学時、それまで自分の剣道を確立してきたつもりだったが、自分の剣道が全く通用しなかったという。技術を磨くため、周囲の実力のある選手たちの良いところを取り入れようとしたものの、自分の剣道を見失い、自分の剣道とは何か模索し続ける日々が続いた。結果が出ずに落ち込むこともあったが、常に前向きに練習に打ち込み、反省点を次の練習に生かすことを考えていたという。その後、2回生になり、1回生を指導する立場になったことや、他回生とも意見を交わすことで、客観的に自分を見つめることができるようになり、「自分の剣道にもいいところがある。足りないところを補っていけばいい」と肩の力が抜けたという。

レギュラーになり芽生えた責任感

大きな転機は、2018年の秋に開催された「全日本女子学生剣道優勝大会」団体戦の出場メンバーに選出されたことだった。出場できるのは、5人。4人はすでに出場選手が決定し、最終的に最後の一枠に對馬さんを選出したのは、4人のメンバーだった。大会に出場したい気持ちはあったものの、「自分がメンバーに入ることで負けてしまったら」と不安もあったという。しかし、信頼している4人のメンバーに選ばれたことで、チームの一員として認められた、と自信が生まれた。その大会は、ベスト16という結果に終わったが、この大会への出場は、彼女の成長に大きくプラスになったという。大会出場をきっかけに、責任感が芽生え、声だしにも力がはいり、積極的に自分の意見を発言するようになった。責任感が「レギュラーとして、みんなを引っ張れる見本になろう」と、彼女の成長を後押ししたのだろう。

全国大会出場を目指して臨んだ関西大会

彼女が出場を目指す「第67回全日本学生剣道選手権大会(以下、全日本)」は、「関西女子学生剣道選手権大会」で4回戦までは勝ち上がらなければならない。約1カ月前から大会を意識し、試合を想定した練習を繰り返したという。大会当日は、適度な緊張感を持ちながら落ち着いて試合に臨めたと振り返る。決勝戦では「優勝というより、相手に勝ちたい」という気持ちで、迷いなく前に出て1本をとると、その後も過去の反省点を思い返しながら冷静に試合を進め、勝利を勝ち取った。

すべての経験が成長の糧に

「ここぞというときに勝負に出る気持ち、踏ん張る気持ちの強さ」と自身の強みを話す對馬さん。今月末に行われる全日本に出場し、同日に行われる「第66回全日本学生剣道東西対抗試合」には、立命館から唯一西軍代表に選出された。「全日本でのベスト4入りと団体戦での関西優勝」を目標に掲げ、「少しでも自分の成長に生かせるように、勝ちきりたいです。しっかり準備して、目の前の相手に勝てるよう、できることを一生懸命やっていきます」と力強く語った。自分の剣道を究め続ける彼女の挑戦はこれからも続いていく。

PROFILE

對馬明里さん

草津東高等学校(滋賀県)卒業。小学1年生から父と兄の影響で剣道を始める。教職課程を受講し、1.2回生のときには授業で部活に参加できないときは、京都の地域で開催されている稽古会にも参加。趣味は、大学入学後に始めた料理。オフの日には、バラエティ番組を観てリフレッシュする。鳶野克己教授のゼミで教育人間学について学び、マインドフルネスなど、学部での学びを競技に生かしている。

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