今年、京都・嵐電(京福電気鉄道)北野線が全線開通90周年を迎えるにあたり、この春、産業社会学部・小澤亘教授のゼミ生15名と文学部京都学専攻の学生7名が、北野線沿線の龍安寺駅 から鳴滝駅に至る地域のマップ「駅から散策マップ」と、地域の名所や歴史などの解説本(ガイド者用)を制作した。今回は小澤ゼミ観光班 の定森さんと市川さんに話をうかがった。

何もかもが初めての経験

キャンパスや学部、学問の枠を超えた学びを求めて小澤ゼミに入った二人。マップづくりにおける彼らの狙いは、沿線の住民に地域の新たな魅力を発見してもらうこと。「地域を誇りに思ってもらいたい」「昔からの住民と新しい住民をつなげたい」、そして最終的には「地域活性化に役立たせたい」という思いが込められている。

マップの種類やコンテンツを検討するため、全国にあるマップの調査から始めた定森さんたち。自治会長や地域の長老の方 への聞き取りや 散策ルートの探索を実施し、住民しか知らない情報や住民であっても見落としがちな情報を中心にマップに盛り込んでいった。マップでは単に紹介文を並べるだけでなくクイズ形式を取り入れる工夫も凝らしている。さらに、地域の方から集めた古い写真の写真展やマップを使ったウォーキングツアーなど、マップ制作から企画を展開させた。「昔と今の写真を比較することで、現在の新たな魅力を見つけられるきっかけになるのではと思って開催しました」、と二人は話す。

制作には苦労もあった。その一つが制作協力を依頼する ために行った右京区役所へのプレゼンテーションだ。「どんな内容であれば、自分たちのプロジェクトに賛同してもらえるのか、を考えていきました。」と定森さん。区役所が推進する地域活性化の方針と、自分たちがやりたいことの共通点を洗い出して訴えかけたという。また、初めは自分たちの思うままに制作していたが、嵐電側から解説の文字量やマップの折り方や開き方、コンテンツの配置など細部にわたり指摘され、試行錯誤したという。

社会人としての意識をもつ

“ただマップをつくるだけ。”最初は楽観的に考えていた定森さん。 「君たちは社会の一員だから、社会人として求められる基準をクリアしないとマップはできないよ。学生気分のままじゃいられないよ。」小澤先生の言葉で意識が変ったという。また物事を進めていく上での議論のスタンスも変化したそうだ。「これまでは、自分の意見をどう相手に理解させるかということばかり意識していたけど、相手の意見と自分の意見をプラスして、よりよい意見を生み出していくことができるようになりました」一方、市川さんも自身の成長としてこう話す。「学生の立場で社会人の経験ができました。世の中にあるものを何気なく使っていたけど、プロジェクトを通じて、どんな物にも関わっている人の思いが込められていることを実感しました」

地域の方々 に「ありがとう」といってもらえたことが喜び、と語る二人。「この地域には、歴史や言い伝えなど光る部分がたくさんあります。」自分たちの地道な活動や地域の人々との繋がりで見つけたこの沿線の魅力は、これからも地域の人によって輝き続けるだろう。

PROFILE

定森暢助さん

奈良北高等学校(奈良県)卒業。
2014年8月〜2015年4月UBCジョイントプログラム参加。 小澤ゼミ観光班では代表を務めた。

市川朋美さん

大阪薫英女学院高等学校(大阪府)卒業。
留学生支援団体SiS Buddy 所属。2015年8月〜2015年9月USQプログラムに参加。

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