直径わずか4.5㎜のボタン型の基板(整流器モジュールボード)は、糸を結ぶだけで電気的接続を実現する。この極小基板および受電機システムの開発に成功し、電磁波で光るアクセサリーを制作した道関隆国教授ら研究グループ。11月、本研究は無線給電技術における世界最大の国際会議「The 2020 IEEE Wireless Power Transfer Conference(以下、IEEE学会)(※1)」で発表され、デモンストレーションを用いた学生コンテスト「WPTC 2020 Student Demo Competition」で見事世界一に輝いた。「コンテストでは世界中の研究者から質問が飛び交い、多くの人が私たちの研究に興味を示してくれたことが嬉しくてしょうがなかった」と笑顔をみせたのは、リーダーの金本美穂さん。大学院生活をかけた彼女の研究と、その魅力を聞いた。

(※1)米国電気電子学会が主催する電気・電子技術に関する世界最大の学会。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大防止のためオンラインで開催し、アメリカ、中国、韓国など世界中から20カ国が参加した。

誰でも実用化できる受電機システムを開発

電池や配線なしで送電できる無線(ワイヤレス)給電技術。一般的に実用化されている非接触型ICカードやワイヤレス充電には「磁界」を活用している一方で、「電磁波」をエネルギー源とするものはまだ実用化されていない。「私たちが開発したこのボタン型基板に糸を結び、衣服に縫い付ければ電磁波で光るアクセサリーがつくれます。“誰でも簡単に受電機がつくれること”が、この研究の最大のポイントです」と魅力を語る。

通常、電気的接続には整流器回路基板に金属アンテナをはんだ付けする必要があるが、本研究では基板に導電性の糸を結ぶだけでそれを可能とする。LEDを取り付ければ最大50cm(※2)離れた場所からでも電磁波で点灯し、ミサンガや靴下に縫い付ければ、光る服飾品ができあがる。この技術は電磁波無線給電技術実用化への大きな一歩であり、今後は着物など日本の伝統的な服飾や芸術作品などへの応用が期待される。

(※2)送電機から平均電力1Wを送電した場合に50cm、人が装着した際は30cmまで電磁波で点灯し続ける。今後、改良を重ね最大点灯距離を伸ばしていく予定。

オシャレなものを研究したい

理工学部4回生の頃、道関研究室が開発した「光るつけまつげ(※3)」の研究を目にした彼女。「女性に焦点を当て、こんなに面白い研究ができるのか」と魅了されて以来、無線給電技術の研究に力を注いできた。オシャレに関する研究に熱心で「つけ爪は熱に弱いことを知ったり、マニキュアの誘電率を計測したり、日々いろいろな発見があります。『ネイルに使うラメを改良してみたい!』という閃きから、既存の技術を応用させて新しい発見に繋がったこともありました」と楽しそうに話した。そんな彼女の目線は、グループ内の研究においても強みになったという。今回、開発した極小サイズの基板は衣類に付けても目立たず、点灯する様子はまさに芸術的。研究においてもデザイン性にこだわった彼女たちの努力の証だ。

(※3)2018年に開発された、無線給電技術を活用した超小型ウェアラブルデバイス。

研究で追究したのは『この技術は何の役に立つのか』『誰でも簡単に使用可能か』を明確にすること。「誰にでも分かりやすく、実用化できるものを作ることに意味があると思うのです。それは研究者にとって大切な指針であり、一番つまずく点でもあります」と振り返る。理論通りの手順を踏んでも動作しないときや、繊細な作業を積み重ねても結果が出ないときは、本当に苦しかったという。「諦めずにこれらを追究し続けたからこそ、IEEE学会でも大きく評価されたのだと思います」と自信をみせた。

新たな技術の発展を目指して

「無線給電技術は、今後さらなる普及と社会への貢献が期待される研究分野です。いつか私たちの技術が応用され、遠くからでも電磁波で光る装置を備えた服ができたとします。車から電磁波が出せるようになれば、暗い夜道でも人の存在を認識できるようになるかもしれません。まだ誰もやっていないことに挑戦することは、研究者としてのやりがいであり誇りでもあります」と目を輝かせる。「この研究を引き継いだ後輩たちが、今後さらに発展させてほしい。そして、社会人になっても子どもの頃の自由研究を楽しむような気持ちで、未知のもの、新しいものに挑戦し、研究する楽しさを忘れずに頑張ります」と意欲に燃える彼女のさらなる活躍に期待したい。

PROFILE

金本美穂さん

立命館大学理工学部卒業。道関隆国教授のマイクロパワーシステム研究室に所属。幼少時代に遊んだゲーム機器のプログラムに興味を抱き、中学生の頃に理系の道へ進むことを決意。趣味はアクション映画の鑑賞で、ネイルやアクセサリーなどオシャレなものが好き。大学院1回生時には、理工学研究科電子システム専攻ポスター発表の中間発表で優秀賞を受賞。IEEE学会には2019年度、2020年度ともに出場し、今回のコンペティションで初めて1位を獲得した。

※「WPTC 2020 Student Demo Competition」で道関隆国教授ら研究グループが発表した研究のデモンストレーション動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=vC71jxdpGec&feature=youtu.be

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