滋賀の魅力を“ぎゅっと”詰めこんだお土産を
「相手を思って選び、手渡すことで、人から人へ繋がれていく。そうやって、私たちのつくったお土産で滋賀の魅力を伝えていきたい」と話すのは、学生団体「ぎゅっと滋賀(※1)」の2020年度代表を務める細川満里奈さん。彼女たちが約1年をかけて企業と共同開発した滋賀のお土産“シガトー”は、県内の平和堂全店で12月から発売が開始された。細川さんと同団体副代表の石崎宏太朗さんが、商品開発を通して得た学びと団体への思いを語った。
※1 食マネジメント学部生を中心に9人で構成され、滋賀の歴史・文化を学びながらその魅力を発信する学生団体
滋賀の魅力を再発見!アイディアコンテストを開催
滋賀県産ほうじ茶が香るガトーショコラ“シガトー”。パッケージには琵琶湖や近江富士、信楽焼などの可愛らしいイラストが描かれている。「実は、滋賀は日本茶発祥の地(※2)なのです。1年前、私たちもその事実をまったく知りませんでした」と話す石崎さん。商品開発のきっかけは、2019年11月に県内外から滋賀の食材・特産品を使ったお土産のアイディアを募集し、開催した「滋賀ぎゅっとおみやげコンテスト」。「滋賀の特産品といえば『赤こんにゃく』や『でっち羊羹』などが有名ですが、私たち学生が気軽に家族や友達に渡せるようなものはあまりありませんでした。ならば、“自分たちでつくろう!”と動き出したのが始まりです」と経緯を語る。
細川さんは「コンテストでは、信楽焼をかたどった焼菓子や、琵琶湖型のゼリーなど子どもから大人まで100件を超えるアイディアが集まりました。コンテストを運営するなかで、さまざまな滋賀の魅力を知ることができました」と振り返る。受賞作品からヒントを得て誕生した“シガトー”は、滋賀のほうじ茶の深い歴史に着目し、京抹茶との差別化を図りながら県内外で親しまれる商品を目指している。
(※2)平安時代初期、最澄が唐から持ち帰ったお茶の種子を比叡山の麓に植えたことが始まりとされる説がある。
企業から学び、こだわり抜いた商品開発
「滋賀の魅力を伝えたい」という彼女たちの思いに賛同した企業により共同開発が進んだ。コロナ禍でコミュニケーションはオンラインが主体だったため、試作品の実食もメンバー各々が自宅で行い「ほうじ茶の風味を生かすため、ホワイトチョコベースで仕上げたい」など、具体的な議論を重ねていったという。石崎さんは「パッケージの箱には高級感を出すため、ざらざらした手触りのエンボス加工を採用しています。オンラインではそれらの感触を全員で確認し合うことができず、メンバー一人ひとりの負担や責任が大きかったです」と苦労を語った。一方で「私たちが尽力してきたように、店頭に並んでいる商品すべてに深いストーリーが込められていることを知りました」と、商品開発の学びを振り返る。
細川さんは「店舗に飾るポップをつくる際、企業の経験豊富な社員の方々からアドバイスをもらいました。ただ大学生が可愛いと思うデザインではなく、『滋賀をアピールするために、琵琶湖カラーの青を使った方が良い』『お菓子としてではなく、お土産として売ることを意識した文言にする必要がある』など、消費者を意識した企画の必要性を実感しました」と教えてくれた。
溢れる滋賀の魅力を伝えていく
細川さんは「平和堂(フレンドマート)でアルバイトをしていたため、実際に商品が店頭に並び、お客さんが手に取る様子を見守っていました。『滋賀ってほうじ茶が有名なんだ。滋賀って良いところだよね』と直接声をかけてもらえた時は、本当に嬉しかったです」と笑顔をみせる。「一人でも多くの人に滋賀の魅力を知ってもらい、好きになってほしい」というメンバーの思いが繋がった瞬間だった。
「この2年間を通して、滋賀には“豊かな食”という大きな魅力があることを発見しました。湖魚や地域の農作物、ワイナリーが豊富で、独自のブランドがたくさんある。まだ知られていないこれらの魅力を、私たちが伝え、広げていきたい」と、団体としての大きな目標を語る彼女たちのこれからに注目したい。
PROFILE
細川満里奈さん
大和高田市立高田商業高等学校(奈良県)出身。「ぎゅっと滋賀」代表。今回の商品開発では企業をはじめとする対外的なコミュニケーションを担当した。小学生の頃から百人一首をしており、百人一首にゆかりのある近江神宮にも足を運ぶ。甘いものが好きで、最近はカフェ巡りを楽しむ。「食を通した地域活性化」を目指し、高校生時にも地域食材を生かした商品開発に取り組んだ経験を持つ。
石崎宏太朗さん
青稜高等学校(東京都)出身。「ぎゅっと滋賀」副代表。商品開発ではスケジュール調整やインナーコミュニケーションを務めた。中学・高校時代は吹奏楽に打ち込んだ。歴史が好きで、日々の活動を通して滋賀の豊かな文化財に触れる。ゼミでは食品開発のためのフレーバー(香り)研究を行うため、今後より奥深く商品開発に生かせるよう学びを進める。