「攻める。最期まで声を出し、諦めずに攻め続ける、それが私らしいプレー」そう語るのは学生最後のシーズン、並々ならぬ思いでテニスに向き合い続けた伊藤さん。2020年10月の「2020年度関西学生テニス選手権大会(以下、関西学生選手権)」では、6試合ストレート勝ちで優勝。11月の「2020年度全日本学生テニス選手権大会(以下、インカレ)」ではベスト8の結果を残した。卒業を控え、ひたむきに走り続けたテニスの道に一区切りをつけようとする彼女に、今の思いを聞いた。

幼少期からテニスを始め、地元のスクールで技術を磨いた。大学では硬式庭球部にも所属し、部活とスクール、学業との両立に勤しみ、週6日、多い日には4時間半も練習をこなした。さらに、持久力が要となる競技のため、テニスの練習だけでなく、短距離走や中距離走など心肺機能を強化するためのトレーニングも毎日欠かさず行った。「大切なのは、諦めずに努力すること。どれだけ努力しても成果が出ないときもあります。それでも努力しなければ何も始まりません」と、これまで積み重ねてきた努力の日々を振り返る。

2019年、「第94回三菱全日本テニス選手権西日本大会」女子シングルスで優勝し、「三菱全日本テニス選手権(以下、全日本選手権)」に初出場。高校時代から夢見ていた全日本選手権への出場がついに実現した。結果は1回戦敗退だったが、全日本選手権に向けてしっかりと練習を積み、自分らしい攻めのプレーができたことが嬉しく、自信にもつながった。この経験から自身の課題を見つめ直し、2020年シーズンに向け、充実した練習を行っていたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、目指していた大会が中止や延期となり、スクールでの練習もできなくなってしまった。自主トレーニングをするものの、先が見通せない状況にモチベーションを保つことが難しかった。しかし、“勝ちたい”という一心で、スクールでの練習再開後、再び全力でテニスに向き合った。「学生最後のシーズンなので、もう一度1からやり直そう」と、これまで以上に練習に打ち込んだ。

これまでの努力を出し切って

学生最後のシーズン、延期となっていた関西学生選手権でこれまでの努力を見事発揮し、6試合全てストレート勝ちで優勝に輝いた。春の関西学生選手権は2回生の時に優勝を経験していたが、夏の関西学生選手権では優勝できておらず、今大会にかける思いは強かったという。「大学生活で一番嬉しい結果でした。逆境を乗り越えて掴んだ優勝に、努力は報われるんだ、と感じました」と喜びを語った。そして、学生最後の大会となったインカレでは、「自分らしいプレーで、楽しんで終わりたい」という強い思いで臨んだ。「ベスト8という結果には満足していませんが、これまでインカレで感じていたプレッシャーはなく、自分らしく攻めのプレーを貫き、のびのびと楽しむことができました」と振り返った。インカレを終えて、「これでテニスを辞めようと決めていたので、やっと終わった、という思いと、終わってしまったんだ、という寂しさもこみ上げてきました」と語る。競技に一区切りをつけた今も休日には友人らと一緒にプレーし、プレッシャーを感じることのないテニスを純粋に楽しんでいるという。

新たな挑戦のとき

1回生の頃から、大学でテニスをやり遂げると決めていたが、卒業後も実業団でテニスを続けるか迷うこともあった。それでも「新しいことに挑戦したい」という思いが消えることはなかった。「17年間ずっとテニスを続けてきて、もっと他のことにも挑戦してみたい、という気持ちがとても強くありました」そう話す彼女の笑顔は、新たなスタートへの期待に満ち溢れていた。今後は商品企画などの仕事に取り組む予定。17年間、テニスと向き合い挑戦し続けた彼女は、次なる新しい扉を叩こうとしている。

PROFILE

伊藤沙弥さん

雲雀丘学園高等学校(兵庫県)卒業。木下明浩教授のゼミに所属し、「シェアリングエコノミーが生み出す新たな価値創造」をテーマに研究。体を動かすことが好きで、ジムでストレッチやランニングなどトレーニングをしてリフレッシュする。趣味は、ショッピングや映画鑑賞。

最近の記事