「私たちが目指すのは、廃棄物を出すことなく資源として循環させるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現。そのなかで、私たち大学生、農家や地元企業とのつながりも活性化させていきます」。学生団体「Uni-Com」代表の隅田雪乃さんは語る。2020年7月に団体を立ち上げ彼女が進めてきたのは、大学の食堂から出る生ごみなどの有機廃棄物を堆肥化させ、出来上がった有機肥料を地域に還元するという、産学連携の一大プロジェクトだ。「地域単位で資源を循環させる」新たなビジネスモデルが、この4月、びわこ・くさつキャンパスで始動する。

日本経済の“当たり前”に抱く違和感

「大量生産、大量消費の日本経済では、常に一定の食品廃棄が発生し、その処理が大きな環境負荷につながっています」と話す隅田さん。高校生の頃から環境問題や国際協力に興味があった彼女は、大学入学後に参加したカンボジアでの教育支援ボランティアの経験が心に残っていた。「学校もない最貧困層地域では、お腹を空かせた子どもたちや、住む家がない人たちが目の前にいました。しかし帰国後、アルバイト先の飲食店では、毎日のように大量の食品廃棄が行われていました」。世界中で貧困問題が深刻化する一方で、当たり前のように食べ物を廃棄する日本社会の現実に疑念を抱かずにはいられなかった。「私たちの周りに“食べ物を捨てる仕組み”ができてしまっていることに、大きな違和感があったのです」。彼女の思いが「Uni-Com」立ち上げの大きな一歩となった。

大学発の資源循環モデルを構築する

「今回、大学内に設置するのは食堂の生ごみを完熟堆肥化させる堆肥舎(コンポスト)です。油分が多く含まれる『食べ残し』も発酵分解できるものを採用しています」。出来上がった有機肥料は滋賀県の農家へ有償提供され、堆肥舎の運用や大学での土壌研究の費用に割り当てられる。農家で育った野菜は、生産者から消費者へ販売されるなど、廃棄物が「資源」として形を変え、経済を循環させるビジネスモデルを構築した。 プロジェクトの軸を固めるまでに、食品廃棄物の処理問題や環境問題、コンポストの仕組みや土壌の研究など、幅広い分野の情報を文献で調べ上げ、大学教授や環境活動家、コンポストアドバイザーから知識を学んできたという。大学の知見を生かし、組織で資源循環に取り組む先行事例をつくることを意識した上で、「持続可能な仕組み」として定着させるために、多くの時間をかけてこのモデルを構想した。

※生ゴミや落ち葉などの有機物を微生物の力で分解・発酵させて堆肥にする処理方法。またはその堆肥・堆肥化する容器のこと。

2021年4月から堆肥化作業が始まり、8~9月頃に有機肥料の第一弾が完成する。「堆肥化の過程で、週に1度、生ごみや発酵資材などを手動で切り返しする(混ぜる)作業は、食マネジメント学部の学生や環境問題に興味を持つ学生を巻き込み、専属チームを立ち上げて行います。授業で学んだ知識を実践する場として活用してほしいです」と語る。現在は他キャンパスへの転用にも動き出しており、後々は立命館を一つのモデルケースとして他大学にも広げていきたいという。

“人のつながり”が生み出すもの

団体としてもう一つ、大きな目的は「資源循環のなかで人と人のつながりを活性化させる」こと。輪を描いて資源が循環するこのモデルでは、社会課題を自分事として捉える人同士が強くつながることで、少しずつ関係人口を増やしていきながら、広がる縁をつくっていく。「物事の背景にある人の思いを知ること、人とのつながりが生まれることで、環境や社会の課題は一歩ずつ解決に近づくはず。私は自然が大好きです。景色の美しさ、風の心地よさ、その“感動”を人と共有できるから。『野菜が美味しい』だったり、『農業って大変だけど楽しい』だったり、それぞれが感動を共有し合うことで、地域に笑顔が生まれていくような、そんな社会をUni-Comで実現したい」。持続可能な未来社会の姿を明確に描き、その実現に向けて歩み続ける。

PROFILE

隅田雪乃さん

1~2回生時に参加したカンボジアでのボランティアでは、学校のない地域で学校建設の手伝いや、体育の授業代わりに子どもたちと運動をするなどの教育支援に携わった。小さい頃から家族で登山やキャンプに出かけることが多く、自然と触れ合うことが好き。趣味で野生ルイボスティの広報・販売をしている。2回生の終わり頃から京都市のシェアハウスに住む。卒業後にはUni-Comのビジネスモデルを他大学や組織に転用するためにプロデュースやコーディネートする立場で関わっていくことを目標にしている。

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