「もっと速く」110メートルHで関西学生新記録を達成
2021年4月4日、「第85回京都学生陸上競技対校選手権大会(京都インカレ)」の男子110メートルH決勝で、関西学生新記録の13秒55で大会を制した徳岡凌さん。「記録は出ましたが、レースの内容は70点くらいでした。もっと速く走れるように練習を積み重ねていきたいと思っています」と振り返る。快挙にも満足することなく、さらなる成長を追い求める徳岡さんに、陸上競技にかける思いを聞いた。
陸上競技との出会い
陸上競技との出会いは小学4年生のとき。地元の大会に出場したことがきっかけだった。本格的に陸上競技の道へ入ったのは中学校からだったが、「あまり練習が好きではなかったので、練習メニューをサボり友達と遊んでいたので、先生に怒られていました」と当時を振り返る。中学1年生の終わり頃、顧問の先生の勧めでハードルに転向したことが大きなきっかけとなった。着実に実力をつけ、高校へは陸上競技のスポーツ推薦で進学した。高校3年生の時にはインターハイに出場したが、0.01秒の差で、準決勝で敗退。陸上競技から引退し、就職しようと考えていたところ、スポーツ推薦の誘いがあり、立命館大学へ入学した。
大学では、浅見公博コーチの指導に大きな影響を受けた。「豊富な経験と科学的なデータに基づいて指導してくださったことで、これまで意識していなかったことにも目を向け、課題を整理しながら練習に取り組めるようになりました」と語る。浅見コーチの指導が身体に染み込むまで繰り返し練習を続け、課題をノートにまとめ、自分が走っている動画を何度も何度も見直し、自分の走りに磨きをかけた。その結果、2回生の時に「第88回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)」で5位入賞の好成績を残すまで成長した。
自然体を大事にする
しかし、3回生の秋に迎えた「第89回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)」では準決勝で敗退。「このままではダメだ。何かを変えないとまずい」と練習の見直しを図りつつ、精神面の課題にも向き合った。「実は昔から本番に弱かったんです。大会で結果を残すためには、精神面の強化が不可欠でした」。そこで、日常生活を丁寧に見直したところ、大会への準備方法に問題があることを発見した。「大会前日は、必ず自分の走りを動画で見直し、修正点を確認して大会に臨んでいました。ですがその結果、自分の走りについて考えすぎてしまい、緊張と興奮で心身のバランスが崩れ、その状態で大会に臨んでいたことに気がつきました」。それからは、「練習でしっかりやっているんだから、確実にタイムは出る。大丈夫」という浅見コーチからの指導をもとに「大会に向けて特別な準備をする」という考えではなく、「普段練習でやっていることを出す」ということを意識し、自然体を大事にするよう心掛けた。また、冬季練習の期間は、身体づくりにも優先的に取り組み、週3回ウエイトトレーニングに励んだことで、体重が4キロ増え、以前よりも力強い走りができるようになった。
自分の走りを追求する
心身に磨きをかけて迎えた「第85回京都学生陸上競技対校選手権大会(京都インカレ)」。「冬季練習でやってきたことを出すだけだ」と自然体で予選に臨むと、いきなり大会記録を更新。決勝では、予選で更新した大会記録をさらに塗り替え、関西学生新記録を樹立。圧巻の走りを見せた。「関西学生記録は目標の一つだったので、率直に嬉しかったです。ここまで成長できたのは、いつも支えてくださっている方々のおかげなので、しっかりと記録を残せてよかったです」と笑顔で語った。一方で、自分の走りに満足はしていなかった。「まだまだタイムは伸びるという感覚があります。日本選手権で決勝まで勝ち残るために、もっと速く走れるように、自分の走りを追求していきたい」と力強く語ってくれた。
さらなる飛躍へ
6月24日から始まる日本選手権へ向け、現在調整を続ける徳岡さん。「自分は熱しやすく冷めやすい性格なのですが、陸上競技への情熱は冷めることがありません。熱中し、どんどん入り込むほど新しい発見があり、自分の成長の可能性が見えてくる。自分自身と向き合っただけ、結果がタイムとして表れます。やればやるだけ結果がついてくる競技なので、『もっと速く走るにはどうしたらよいか』それを考え続けて、楽しく取り組んでいきたいです」。関西の頂点から日本の頂点へ。徳岡さんのさらなる飛躍に目が離せない。
PROFILE
徳岡凌さん
兵庫県立社高等学校出身。小学校の頃はサッカー少年団に所属。中学校から本格的に陸上競技を始め、3年生時に全国中学校体育大会の準決勝進出。高校では3年生時にインターハイに出場。国体、U20日本選手権では8位入賞を果たす。好きな歌手はONE OK ROCK。休日は友人とゲームをして過ごすことが趣味。
<男子110mHの主な成績(2021年度) >
3月 第104回日本陸上競技選手権・室内競技 男子NCH 60m 6位 7秒82
4月 第85回京都学生陸上対校選手権大会(京都インカレ) 優勝 13.55
5月 READY STEADY TOKYO(東京オリンピックテストイベント) 8位 13.77
5月 関西学生陸上競技チャンピオンシップ(関西インカレ代替大会) 優勝 13.71
6月 日本学生陸上競技個人選手権 優勝 13秒55