「学園祭は、多くの学生が輝く貴重な機会。『今年こそは学生が輝く場をつくる』と決意し、対面での学園祭の開催へ向けて全力を尽くしました」。そう語るのは、「2021年度立命館大学学園祭実行委員会」の委員長を務めた鈴木輝さん。学生が主催・運営する学園祭において、総勢約250人の学生スタッフをまとめ、参加者事前予約システムやライブ配信企画「FestivaLive!」を導入し、立命館大学初となるハイブリッド型での開催を実現。テーマとして掲げた「Re:Start」(再始動)にふさわしい、新たな学園祭の形をつくりあげた。断腸の思いで中止となった2020年度の学園祭から約1年。仲間とともに奮闘を続けた彼に話を聞いた。

2年ぶりの開催へ向けて

学園祭の運営に関心を持ったのは、高校生のとき。近隣の大学の学園祭に参加し、規模の大きさに圧倒されたことがきっかけとなった。1回生の頃から学園祭の運営に参加し、全体統括を担う学園祭実行委員会や、会場の運営を担当する特別事業部で業務を担い、学園祭に情熱を注ぎ続けた。

ところが、2020年度の学園祭は、新型コロナウイルス禍の影響を受け中止に。年が明けても、次年度の開催は不透明なままだった。そうしたなか、鈴木さんは2021年度の学園祭実行委員長に就任することに。「今年こそは、必ず対面で学園祭を開催したい」。2年ぶりの開催へ向け、鈴木さんの奮闘が始まった。

今年こそは学生が輝く場を

前年度の中止の影響により、実務などの引き継ぎが十分にできておらず、準備は手探りの状態が続いた。そうしたなか、鈴木さんが心がけたことは、役割や考え方の違いがあっても、協力し合える組織をつくることだった。「難しい状況だからこそ、立場や考え方の違いを越えて協力できる関係づくりを大切にしました」。各部門が活動を行う場に足しげく通い、さまざまな役割を担った自身の経験をもとに、仲間と率直に意見を交わすことで、互いの関係を深めていった。

それでも、学園祭の対面開催には、依然として多くの課題があり、特に感染症対策の徹底は不可欠だった。そこで、学生部の職員とも協議しながら、学園祭実行委員会を中心に感染症対策の項目や基準について徹底した検討を行い、独自の感染症対策ガイドラインを策定した。さらに、会場での混雑緩和のために、外部機関と調整を進め、参加者の事前予約システムを導入するなど、対面開催に向けた仕組みを徐々に整えていった。

だが、入場者数を制限すると、学園祭の重要な意義である「学生文化の発信」が十分に達成できないのではないかという懸念の声が学園祭実行委員会のなかで上げられた。「開催する以上、課外自主活動の成果が十分に発信できる環境を整えなければならないと考えていました」と語る鈴木さん。妥協を許さない姿勢の背景には、昨年の悔しさがあった。「昨年は多くの学生が日頃の成果を披露する機会を失い、悔しい思いを残す結果となりました。だからこそ、今年は学生が輝く場をつくりたい」。協議を重ね、対面開催だけでなく、YouTubeなどを活用した配信企画「FestivaLive!」を導入し、ハイブリッド型で開催することを決定。各会場のライブ配信や特別企画の放映を通じて、各団体が日々積み重ね、育ててきた学生文化を多くの人に届けることができる環境を整えた。

生まれ変わった学園祭

2021年11月14日、「2021年度 立命館大学学園祭」の第一幕を飾る「衣笠祭典」が開催され、多くの参加者でにぎわった。各団体のステージ企画や、展示企画、模擬店などが催され、会場は大いに盛り上がった。続いて開催された「OIC祭典」では、多くの地域住民が参加し、大学と地域が一体となる祭典となった。また、感染症対策をより徹底するため、広報物の設置を増やすなど、安全な環境づくりに尽力した。終幕となる「BKC祭典」では、最も多くの参加者が集い、迫力あるステージ企画など、さまざまなイベントが催され、会場は笑顔に溢れた。対面の参加者は計12140人に達し、オンライン企画は8915回の再生回数を記録。2年ぶりの学園祭は、以前よりも輝きを放ち、幕を下ろした。

次世代へ思いを託す

「まずは無事に学園祭を終えることができ、ほっとしました」と語る鈴木さん。「学園祭実行委員会や特別事業部の仲間たち、そして、周囲の方々の多くのご支援のおかげで、新たな形で学園祭を実施できました」と感謝を述べた。今後は、次年度の開催に向けて奮闘する後輩たちへ、自身が培った知識や技術を余すことなく引継ぐ予定だ。学園祭に情熱を注ぎ続けた彼の信念も、必ずや次の世代に受け継がれるだろう。

PROFILE

鈴木輝さん

埼玉県出身。1回生から3回生まで、学園祭や産業社会学部自治会の業務など、幅広い活動に携わる。学生自治組織である立命館大学学友会からの推薦を受け、学園祭実行委員長に就任し、初のハイブリッド型となる学園祭の開催に力を注いだ。趣味はお菓子作りで、最近はケーキをよく作っている。

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