「スティックとボールは僕にとって友達です」。そう笑顔で語るのは、ホッケー部男子の藤島来葵さん。多くの日本代表選手を輩出してきた立命館大学ホッケー部の主将を務め、シニア日本代表「サムライジャパン」候補の一人でもある。「自分のためにも、仲間のためにも、中途半端な気持ちでホッケーはできません」。ひたむきにホッケーと向き合い続けてきた彼の信念と、仲間への思いに迫った。

誰よりも練習を重ねる

小学3年生からホッケーを始めた藤島さん。地元の飯能市が「ホッケーのまち」であることや、親族がホッケー選手として活躍していた影響で、ホッケーは身近な存在だった。中学生になると、クラブチームに所属しながら学校の陸上部でも厳しい練習を続け、3年生のときには、16歳以下の日本代表に選出。オーストラリアで行われた「Hockey WA F-H-Eカップ2014」で見事優勝を果たした。しかし、高い目標を掲げたことで、挫折も味わった。「プレーだけでなく、精神面でもチームメイトとの大きな差を感じ、自信を失いました」。

それでも、そうした状況から目を背けることはなかった。「こんな悔しさはもう味わいたくない」。高校では誰よりも練習を重ね、1年生の終わりには主将に抜擢された。熱心な仲間とともに練習に打ち込み、2年生のときに18歳以下の日本代表に選出。3年生のときには「全国高等学校選抜ホッケー大会」で3位入賞を果たした。「『これだけ練習したから大丈夫』。そう自分で思えるほど練習を重ねたことで、自信を持つことができました」。

立命館大学へ進学を決めたのは、小学生の頃に試合を観たことがきっかけだった。「圧倒的な強さと、ホッケーを心から楽しむ姿に惹かれ、『この大学でホッケーがしたい』と強く思いました」。入部後、すぐに練習試合で抜擢されるも、レベルの高さに戸惑った。「戦術の深さや、相手の動きに即座に対応する組織的なホッケーに圧倒されました」。その経験から、先輩のプレーを手本に、基本的な技術を磨きながら試合を想定した練習を重ねることで、戦術面や組織的なプレーへの理解を深めた。その結果、ディフェンスや前線へのパス、セットプレーからのシュートの精度を高めることに成功し、「2018 全日本大学ホッケー王座決定戦」では優勝に貢献。2019年にはシニア日本代表にも選出され、24カ国が参加した「FIH・シリーズ・ファイナル」では、日本代表の一員として3位入賞に貢献した。

コロナ禍では、海外の選手の分析を行うことで、自身のプレーの幅を広げ、秋のインカレでの6年ぶりの優勝に貢献し、優秀選手賞を受賞。新チームでは主将に就任すると、「ホッケーを楽しむ」という立命館のスタイルを突きつめることを心がけ、数多くのミーティングを重ね、選手間の声掛けを意識することで、「楽しく、真剣な」雰囲気づくりに力を注いだ。新チームは「2021年度関西学生ホッケー春季リーグ」で2季ぶりに優勝を果たし、個人でも、決勝戦で全得点を奪う圧巻の活躍により、最優秀選手賞を受賞。東京五輪出場へ向けて着実に結果を積み重ねた。

仲間に支えられて

しかし、2021年の日本代表選考ではまさかの落選。東京五輪出場は叶わぬものとなった。「落選しても練習要員として代表合宿を続ける必要がありました。『何のためにここで練習をしているのか』と思うこともあり、苦しい時期が続きました」。そんな藤島さんを支えたのは仲間の存在だった。「離れていても、大学の同期が僕のことを支えてくれ、チームを盛り立ててくれました。仲間のおかげで目が覚め、自分がやるべきこと、立命館のレベルアップに向けて頑張ろうと決意しました」。大学チームへの合流後、代表合宿で得た経験をメンバーに還元することを心がけ、攻撃力の底上げに力を注いだ。迎えた秋のインカレでは、練習が実を結び、準決勝で山梨学院大学に逆転勝利。決勝では惜しくも天理大学に敗れたが、「自分たちらしいプレーをすることができた」と充実した表情で語ってくれた。

子どもたちへ夢を与えられる選手に

2021年12月に行われた「第6回 アジアチャンピオンズトロフィー」では、日本代表として、東京五輪3位のインドを相手に得点をあげ、準優勝に貢献。新たな一歩を踏み出した。卒業後は、地元の社会人チームへの所属が決まっている。次の目標は、日本代表チームの中心的な選手になることだ。「子どもたちへ夢を与えられる選手になりたいと思っています。大舞台でも恥じないプレーをするために、周囲への感謝を忘れず、これからも精進を続けます」。パリ五輪へ向け、さらなる飛躍を誓う彼の活躍に目が離せない。

PROFILE

藤島来葵さん

埼玉県立飯能南高等学校卒業。小学1年生からサッカーを始め、小学3年生から並行してホッケー教室に通うようになる。中学生のときに所属していた陸上部では、800・1500・3000mの選手として県大会に出場。趣味はカラオケと釣りで、チームメイトと一緒に楽しんでリフレッシュしている。

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