「『受け身のままでは、チャンスはつかめない』。オンライン留学への参加をきっかけに、自分を信じて挑戦する姿勢を育むことができたと感じています」。そう語るのは、2021年9月から約4カ月間行われた「立命館×UBCオンライン・プログラム―カナダで学ぶGlobal Citizenship」に参加した山本美結さん。高校での短期留学をきっかけに長期留学を志して大学に入学するも、コロナ禍でそれが叶わず失意のどん底に落ちた彼女。それでも諦めることなくオンライン留学プログラムに挑戦し、この夏、念願の長期留学に向かう。大きな成長を遂げ、新たな目標に挑む彼女の奮闘に迫った。

ブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia:UBC)は、世界大学ランキングで上位に評価されるカナダを代表する大学。本学とUBCは、共同で開発したカリキュラムに基づく「立命館・UBCアカデミック・イマージョン・プログラム」を1991年から実施。国際人に必要な語学力や素養を身に付けるプログラムとして、多くの学生が参加してきた。

異文化を深く知りたい。進路を方向づけた短期留学

海外ドラマや音楽を通して、小さな頃から海外文化に関心を持っていた山本さん。高校1年生の夏にオーストラリアへ短期留学した後、2年生のときには短期留学でイギリスへ。2度目の留学に期待を膨らませる彼女だったが、早々に気持ちの沈む出来事が起こる。教員との初回面談で評価シートに書かれたのは「shy」の文字。気を取り直して講義に出席するも、他国・地域の学生の語学力や積極的な姿に自信を失い、何も発言ができなかった。それでも勇気を振り絞り、級友との交流を試みるも、そこでも追い打ちをかける出来事が。「ロシア人の学生とすれ違ったので微笑んだら、怪訝な顔をして無視されてしまったんです」。後にわかったことは、ロシアの人は親しくない人に対して笑顔を見せることが少なく、「笑う=馬鹿にしている」と受け取る傾向があるということだった。

その出来事の衝撃は、帰国後の彼女の進路選択に大きな影響を及ぼした。「多様な文化や価値観を深く学びたい」。その思いから、異文化理解を学ぶ専攻に進学するため、文系クラスへの転籍を決断。留学プログラムが充実した立命館大学に進学し、カナダのUBCに長期留学する「立命館・UBCアカデミック・イマージョン・プログラム」へ応募した。

オンライン留学プログラムへの参加

念願だった長期留学に、ついに行けると思ったその矢先、コロナ禍の影響でUBCへの留学は中止に。「正直、勉強をする意味を見失いました」と当時を振り返る彼女。だが、失意に沈む彼女のもとに、オンライン留学プログラムが設置されるという報せが届いた。当初は応募をためらった彼女だったが、母親の一言がそんな彼女の背中を押した。「ずっと頑張ってきたんだから、諦めずにできることをやったらええやん」。その言葉で留学にかける自分の思いを再認識した山本さん。「今やれることを精一杯頑張ろう」。葛藤を抱えながらも、彼女は一歩踏み出すことを決意した。

2021年9月から、「立命館×UBCオンライン・プログラム―カナダで学ぶGlobal Citizenship」に参加した山本さん。しかし、プログラムがスタートすると、イギリス留学で抱えた発言への苦手意識が頭をよぎり、どうしても自分の意見を相手に伝えることができなかった。だが、それでも彼女が自分の弱さから逃げることはなかった。講義の予習に力を注ぎ、トピックの要点となる知識を体系立てて学習することで、伝える力を磨いていった。徐々に臆せず意見を伝えることができるようになり、プログラム期間中に行われたカリフォルニア大学デービス校とのオンライン国際交流企画では、積極的に意見交換できるほどに成長を遂げた。「当初は英語を話すことに不安を抱えていましたが、しっかりと知識を習得して準備を怠らなければ、決して怖くないということを実感しました」と語る彼女の言葉には、力がこもっていた。

約4カ月のオンライン留学プログラムを終え、TOEICのスコアを約100点伸ばすことに成功。全力で駆け抜けた日々は、彼女の内面をも大きく成長させた。「困難なことでも諦めず、自分の可能性を信じて挑戦できるようになりました」。春休みになると、タイの学生とのグループワークや、企業へのプレゼンテーションを英語で行う「Web版グローバルスタディ inバンコク」に参加。さらに、国際学生と1対1で言語を教え合う「SUP! Language Exchange Program」に登録し、異文化コミュニケーションのスキルを培った。

念願の長期留学へ

大きな成長を遂げた彼女は、この夏、ついに長期留学でタイに行くことを決意。タマサート大学で、以前から関心を寄せていた東南アジアにおけるジェンダーの研究を行う。「多様な価値観を持った人々との交流を通して、多角的に物事を捉える力を養いたいです」と意気込む彼女。「内気な部分はまだ変わりませんが、現地では臆することなく、新たな事にチャレンジしてみたい」と前を見据える。この夏、自身のさらなる可能性を広げるべく新天地で挑戦を続ける彼女に、心からのエールを送りたい。

PROFILE

山本美結さん

関西大倉高等学校卒業。小学生のときに、アメリカのコメディドラマ「フルハウス」や韓国の女性アイドルグループ「KARA」の影響で、海外の文化に関心を持ち、英語と韓国語を独学で学び始めた。コロナ禍が収束したら真っ先にやりたいことは、オンライン交流イベントで知り合った韓国の友人とお互いの国を案内しあうこと。オンライン留学プログラムで一番面白かったと感じる講義は、カルチュラルスキーマ、ボディランゲージに関する講義。細かな点にも文化の違いが表れていることを知り、とても楽しく学ぶことができたと語る。
今夏、タイ・インドネシアのトップ大学で専門科目を学ぶ「ASEANで学ぶ国際PBLプログラム」に参加し、約半年間、タイのタマサート大学で学修を進める予定。

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