大阪いばらきキャンパス(以下、OIC)のある大阪府茨木市では、管理されていない竹による“竹害” が問題となっている。この竹を伐採、焼いて竹炭にし、畑に入れて野菜を栽培する取り組みがある。竹炭は土壌の保水力や養分を貯える力を高める作用が強く、ミネラル分なども含むため土壌の改良資材となる。この取り組みを進める学生団体「OIC×BBSカーボンマイナスプロジェクト(通称:クルベジプロジェクト)」では、栽培した野菜を「クールベジタブル」略して「クルべジ」と呼んでいる。「クルべジ」普及に尽力する学生団体「OIC×BBSカーボンマイナスプロジェクト」代表の北万里子さんに話を聞いた。
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地球を冷やす野菜=“クルべジ”とは

なぜ「クールベジタブル」と呼ぶのか。
植物は二酸化炭素を吸収するが、枯れると外に排出してしまう。しかし、竹や木などは焼いて炭にすると、炭素(C)を固定することができる。それを地中に埋め、空気中の酸素(O)との結びつきを防ぐことで、二酸化炭素(Co2)の削減につながる。炭を入れた畑で作った野菜のことを『二酸化炭素を減らすことで地球を冷やす野菜=クールベジタブル』と呼んでいる。こうした農法は、環境保全型農業と呼ばれている。
「通年で6種類、時期によって他にもさまざまな野菜を作っています。これまでに、クルベジを茨木市のみなさんに知ってもらえるよう、学生スタッフのみんなと収穫祭などのイベント開催に力を入れ、『クルベジを茨木市から広げていきたい』という思いで活動してきました」と北さんは語る。

2022年夏、「クルベジを通してもっと地域の方々との交流を深めたい」と、収穫祭とともに採れたてのクルベジで作ったカレーを提供する『カレー祭り』を開催。美味しくカレーを食べた後には、クルベジのことを理解してもらうために、学生スタッフみんなでアイデアを出し合って作った紙芝居を披露した。
「カレー祭りには、多くの家族連れの方々が参加してくださいました。普段は小食だというお子さんが、自分で収穫したクルベジのカレーを『今までで一番おいしい!』とたくさん食べてくれました。また大人の方からは、紙芝居を見て『すごく有意義な活動だね』との感想をいただきました」と充実した様子で話す。

またクルベジは、『食べるだけでエコ』な商品として、少しずつ市場での販売を開始している。現在は限定的にJA茨木市 農産物直売所 みしま館で販売しており、その他にも市の農業イベントなどがあれば、臨時販売している。
「今は数量限定の販売ですが、今後はスーパーや百貨店の野菜売り場などで常時取り扱っていただけるように、この事業を成長させていきたいです」と北さんは未来を見据える。
農業の持つ物質循環機能を生かして、生産性との調和に留意し、化学肥料や農薬などの使用による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業のこと。
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目指したい生き方を見つけた

北さんがクルベジプロジェクトと出会ったのは、立命館大学サービスラーニングセンターの学生コーディネーターを務めたことに端を発する。学生コーディネーターは、ボランティアや地域・社会貢献活動を促進・支援する学生ピア・サポート(学生による学生の支援)団体だ。

大学1回生の時は、新型コロナウイルス感染予防対策により授業はオンラインだったため、愛知県の実家で過ごした。2回生から対面授業が再開されたことを機に、茨木市に引っ越した。1年間思うように活動できなかった分、学生コーディネーターをはじめ、興味があるボランティア活動に積極的に参加した。さまざまなボランティア活動を経験するなかで、価値観を大きく変える出会いがあった。
「循環型農業」をはじめとした自給自足型のまちづくりを目指し、茨木市内で活動する一般社団法人「みずとわ」(以下、みずとわ)主催の農業ボランティアとの出会いだ。 「循環型農業の話を聞いた時、『なんて無駄のない美しいシステムなんだ』と感動しました」と彼女。
「また、みずとわに携わっている農家さんたちの、“食べるための仕事をする”のではなく、 “好きなことを仕事にしている”姿を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。それまでは『誰とするか』を重視してきましたが、この関わりをきっかけに、『何をするか』についてもよく考えるようになりました。そして何度も畑に通ううちに『これが私の目指したい生き方だ!』と、思うようになっていました」と振り返った。

みずとわの農家の方から聞いた話で、特に印象的なものがあった。「『気候変動は、自分たちのすぐ身近に起こっていること。例えば、この数年の間でも作物の植え付け時期がずれたり、病気も流行りやすくなったりしている。気候を変えることは難しいが、順応していけるように取り組んでおくことはできる』という話でした。常に自然と関わり続けている方の言葉には、とても説得力がありました」と北さん。
『目指したい生き方』を見つけた彼女は、クルベジ事業に参入していた先輩に紹介してもらい、クルベジプロジェクトの活動にも力を入れ始めた。
農薬や化学肥料に頼るだけでなく、生ごみなどの廃棄物を肥料として使い、通常であればゴミとして廃棄するものを活用することで環境負荷の低減を目指す農業のこと。
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帰るべき場所

今では茨木市を「帰るべき場所」と呼ぶほど、このまちに愛着があるという。 「茨木市の“まちと自然が調和しているところ”が好きです。まちなかのほど近くに山があって農業ができる。そして何より、他地域からの人も受け入れてくれる温かさがあります。私にとって茨木市は、楽しく過ごせて落ち着く、帰るべき場所です」と笑顔で語る。
出会ってきた茨木市の方々は、家庭や仕事で忙しいなかでも、“学生たちのために”という思いを持ち、行動力に溢れた熱心な方が多いのだという。「みなさんのおかげで充実した学生生活を過ごせているので、恩返しがしたいんです。クルベジ活動などを通して、茨木市をさらに盛り上げたい。多くの方々に茨木市を知ってもらう機会を増やしたいです」と感謝の言葉を述べた。

今後については、「目の前の環境をいかに楽しむかがテーマです。自分なりの楽しい生き方を実現している方たちともっとつながっていきたいと思っています。今の夢は『自給自足コミュニティ』を作ることです」と輝く笑顔を見せた。

茨木市でのたくさんの出会いから、『目指したい生き方』を見つけた北さん。彼女のさらなる活躍をこれからも追い続けていきたい。
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PROFILE

北 万里子さん

名古屋市立菊里高等学校卒業。
趣味は、お笑い番組を見てリフレッシュすること、日向ぼっこ。太陽が出ていると気分が上がる。 休日には、友人と茨木市の個人飲食店巡りをすることが好き。

『目指したい生き方を見つけられた』のは、少しでも興味を持ったものには必ずアクションしてきたから。自分の感覚に従って行動するなかで、“好きだ”と感じるものを見つけていった。また、一緒にいて楽しい人が運んできてくれる情報は楽しい、という実感がある。

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